第403話
第403話
翌日。
砦の門が開き、待ち望んでいた援軍が到着した。
「第一隊だ!」
外壁の上から声が上がる。
先頭を進むのはライナー。
その後ろには第一隊の騎士たちが続いている。
そして、その中には。
「ルシアン!」
レオンがこちらに気づき、手を上げた。
「レオン」
ルシアンも軽く手を上げる。
その隣にはグランヴェルとレティシア。
さらにアレス、フェルディナント、カトレアの姿もあった。
「テオドールも!」
「ああ」
「二人とも無事そうだな」
「そっちもな」
テオドールが答える。
「昨日、魔族と戦ったんだろ?」
「はい。SSクラスもいました」
「SSクラス……」
レオンの表情が引き締まる。
「今日は俺たちも戦うことになりそうだな」
「大規模試験が始まってからは初めてですね」
「ああ」
レオンが頷く。
「ルーチェも頑張ろうな」
『ウン! ガンバル!』
ルーチェが元気よく拳を上げる。
「レティシアさんも前線ですか?」
「ええ」
ルシアンの問いにレティシアが頷いた。
「アレスさんたちと一緒に行動することになってるわ」
「なら、四天王でも出てこない限りは大丈夫そうですね」
「簡単に言うわね」
レティシアが苦笑する。
「まあ、そう簡単に四天王が出てくるとは思えないけど」
「来たら来たで面倒だな」
アレスが呟く。
カトレアがその横を見る。
「面倒で済むの?」
「済ませるしかないでしょう」
「それもそうね」
僅かな会話を交わしたところで、ライナーたちがガレスとの話を終えた。
すぐに今日の配置が決められていく。
第一隊は前線。
第三隊は砦を中心とした防衛。
第四隊は第一隊の援護に回る。
「俺たちは魔物の処理が中心だね」
レイモンドが言う。
「魔族が出てきた場合は?」
テオドールが尋ねる。
「基本的には第一隊に任せる。俺たちが魔物を抑えて、第一隊が動きやすい状況を作る」
「分かりました」
「もちろん、状況次第では魔族とも戦うことになるよ」
ヴィオラが二人を見る。
「昨日と同じ。周りをよく見て動いて」
「はい」
「分かりました」
準備を整える。
そして、昨日と同じように、敵襲を知らせる声が砦へ響いた。
◇
魔物の群れが押し寄せる。
その中には昨日より多くの魔族が混ざっていた。
「来るぞ!」
騎士たちが一斉に動いた。
最前線で、第一隊が敵の群れと激突する。
「はぁっ!」
一人の騎士が魔物の攻撃を受け流す。
その横から別の騎士が斬り込む。
さらに後ろから魔法。
倒れる。
だが、既に次の魔物へ向けて動いている。
「すごい……」
テオドールが思わず呟く。
昨日の第三隊も強かった。
だが、第一隊はさらに違う。
一人が動けば、その空いた場所を別の者が埋める。
誰かが敵を受ければ、別の者が攻撃する。
魔物が横へ抜けようとすれば、その先には既に騎士がいる。
ほとんど動きが止まらない。
「見てる場合じゃない!」
「っ、はい!」
ヴィオラの声。
テオドールが杖を向ける。
風が魔物を吹き飛ばした。
そこへアリシアが踏み込む。
一閃。
「次!」
魔物が迫る。
ルシアンが斬る。
レイモンドの魔法がその後ろの一体を撃ち抜いた。
第四隊も第一隊の後ろを進んでいく。
前へ出すぎない。
第一隊が魔族へ集中できるよう、周囲の魔物を処理する。
「右から来ます」
ルシアンの声。
「任せて!」
アリシアが向かう。
左からも魔物。
「俺がやります!」
テオドールが魔法を放つ。
雷が直撃。
一体が倒れる。
さらに二体。
今度は敵だけを見ない。
周囲を見る。
味方の位置を確認する。
その上で杖を向けた。
「そこだ!」
風が吹き荒れる。
魔物たちの動きが崩れた。
「いいね」
レイモンドが言う。
「昨日より落ち着いてる」
「ありがとうございます!」
「そのまま続けて」
「はい!」
少し前。
レオンたちも戦っていた。
アレス、フェルディナント、カトレア。そして、レオン、グランヴェル、レティシア。
その周囲には第一隊の騎士たち。
「レオン、前!」
「はい!」
カトレアの声にレオンが踏み込む。
魔物の爪を剣で受け流す。
「ルーチェ!」
『ウン!』
光が走る。
体勢を崩した魔物。
レオンの剣が斬り裂いた。
横から別の魔物が迫る。
その前へグランヴェルが出た。
「邪魔だ!」
炎を纏った剣が振るわれる。
魔物が吹き飛ぶ。
その後方、レティシアが魔法を放つ。
広範囲へ広がった魔法が、押し寄せる魔物たちをまとめて巻き込んだ。
「相変わらずすごい火力だね」
フェルディナントが言う。
「まだ来るわ!」
レティシアが声を上げる。
「分かってる」
フェルディナントが前へ出た。
水が魔物の動きを止める。
その隙をカトレアの風が切り裂いた。
止まらない。
魔物も、魔族も、次々と押し寄せてくる。
それでも第一隊の陣形は崩れなかった。
魔族が現れれば複数人で対応し、魔物が群がれば周囲が処理する。
倒した者がそのまま突出することもない。
すぐに次の味方と動きを合わせる。
「これが第一隊……」
少し後ろからテオドールがその戦いを見る。
個々が強いだけではない。
全員が周囲を見ている。
自分がどこへ動けばいいのか、誰を助けるべきなのか、誰に任せるべきなのか。
それを迷わない。
昨日の自分とは違う。
「……まだまだだな」
テオドールが呟く。
「テオドール」
「分かっている!」
ルシアンに呼ばれ、すぐに魔物へ杖を向けた。
その時、前方の空気が変わった。
「……来るぞ」
アレスが剣を止める。
魔物たちの向こう。
三人の魔族が歩いてきていた。
一人は巨大な戦斧を担いでいる。
一人は剣。
そしてもう一人も剣を持っているが、その周囲には既に魔力が集まっていた。
アレスが僅かに目を細める。
「強いな」
「ああ」
フェルディナントも表情を変える。
戦斧を担いだ魔族が前へ出た。
周囲を見渡す。
そして、アレスたちのところで視線を止めた。
「見たところ――」
戦斧を肩に乗せる。
「お前たちが一番厄介そうだ」
口元に笑みを浮かべた。
「悪いが、潰させてもらうぞ」
「やってみろ」
アレスが剣を構える。
次の瞬間、戦斧の魔族が地面を蹴った。
「おおおっ!」
振り下ろされる戦斧。
アレスの剣が迎え撃つ。
激突。
轟音と共に地面が割れた。
「っ!」
レオンが思わずそちらを見る。
だが。
「余所見するな!」
「!」
別の魔族が動いた。
剣を持つ魔族。
グランヴェルへ迫る。
「ふん!」
グランヴェルが剣を合わせる。
甲高い音。
続けて二撃、三撃。
「いい剣だ」
グランヴェルが笑う。
「貴様もな」
魔族が返す。
そこへフェルディナントが踏み込んだ。
「一人でやる必要はないよ」
「分かっている!」
二人で剣の魔族へ向かう。
その横。
「貴殿らの相手は私がしよう」
もう一人の魔族が剣を振るう。
同時に魔法が飛んだ。
「レオン!」
「はい!」
カトレアの風が魔法を逸らす。
レオンが一気に距離を詰めた。
「はぁっ!」
剣。
魔族が受ける。
レオンの横から氷が飛ぶ。
魔族が後ろへ跳んだ。
「なるほど」
カトレアが剣を構える。
「魔法も使うのね」
「剣だけで戦う理由もないのでね」
魔族が再び魔力を集める。
「来ます!」
レオンが未来を見る。
次の攻撃。
その先を捉える。
「右です!」
「分かった!」
二人が同時に動いた。
そして。
「まとめていくわよ!」
後方からレティシアの声。
魔力が膨れ上がる。
放たれた魔法が、戦場へ降り注いだ。
アレスと戦斧の魔族。
互いに一歩も譲らない。
グランヴェルとフェルディナントは剣の魔族を挟み。
レオンとカトレアは魔法剣士の魔族とぶつかる。
その周囲では第一隊と第四隊が魔物を抑え続けている。
敵は三人だけではない。
周囲には無数の魔物。
他の魔族もいる。
僅かな油断も許されない。
「はぁっ!」
レオンが剣を振るう。
魔族が受け止める。
横から迫ってきた魔物へ、カトレアが風を放った。
「次が来るわよ!」
「はい!」
再び魔族が踏み込んでくる。
レオンも前へ。
戦場の各所で激しい戦いが続く。
第一隊が到着したことで防衛戦は、新たな局面へと入っていた。




