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果てなき世界  作者: 影川明空人
第9章 学園2年目 大規模試験編
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第400話

第400話


 森を抜けると、前方に大きな砦が見えてきた。


 魔族領に築かれた、第三隊の防衛拠点。


 高い外壁に囲まれ、その上には何人もの騎士が配置されている。


「着いたな」


 レイモンドが砦を見上げる。


 門の前まで進むと、こちらに気づいた騎士が手を上げた。


「第四隊だ!門を開けろ!」


 重い音を立てながら門が開いていく。


 ルシアンたちはそのまま砦の中へ入った。


 内部では多くの騎士たちが慌ただしく動き回っている。


 武器を運ぶ者、負傷者の手当てをする者、外壁の上で周囲を警戒する者。


 これまで向かった場所とは、明らかに空気が違った。


「来たか」


 一人の男がこちらへ歩いてくる。


 第三隊の騎士、ガレス。


 この砦の指揮を任されている男だ。


「第四隊、到着しました」


 先頭にいた騎士が報告する。


「ああ。助かる」


 ガレスが第四隊の面々を見渡す。


 そして、ルシアンとテオドールで僅かに視線を止めた。


「そっちの二人がアーカディアの学生か?」


「はい」


 ヴィオラが答える。


「ルシアンとテオドールです」


「そうか」


 ガレスが二人を見る。


「ガレスだ。この砦の指揮を任されている。よろしくな」


「ルシアンです。よろしくお願いします」


「テオドールです。よろしくお願いします」


「ああ」


 短く挨拶を済ませると、ガレスはすぐに表情を引き締めた。


「早速だが、状況を説明する」


 全員の視線が集まる。


「一昨日辺りから、魔族側が攻勢を強めてきている」


「一昨日から?」


「ああ。それまでも小規模な戦闘はあったが、明らかに数が増えた」


 ガレスが砦の外へ視線を向ける。


「それだけなら第三隊だけでも問題なかったんだがな。複数のSSクラスを確認した」


 テオドールの表情が僅かに変わる。


「魔物だけじゃないんですか?」


「魔族もいる」


 ガレスが頷く。


「確認できているだけでも、かなりの数だ。だから第四隊に応援を要請した」


「第一隊にも?」


「ああ」


 レイモンドの問いにガレスが答える。


「第一隊にも要請を出している。向こうにも任務があるからすぐには動けないが、明日にでも到着するはずだ」


「それなら、それまでは防衛ですね」


「そうなる」


 ガレスが全員を見る。


「第一隊が来るまでは無理に押し返す必要はない。砦を守れればそれでいい」


「分かりました」


「特に学生二人」


 ガレスがルシアンとテオドールを見る。


「ここは訓練場じゃない。無理して功績を上げようなんて考えるなよ」


「はい」


「分かりました」


 その時だった。


 外壁の上から声が響いた。


「敵襲!」


 一瞬で空気が変わる。


「来たか」


 ガレスが砦の外へ視線を向けた。


「数は!」


「多数!魔物だけじゃありません!魔族も確認!」


「全員配置につけ!」


「はい!」


 騎士たちが一斉に動き始める。


 ガレスもすぐに指示を飛ばしていく。


「第四隊も出るぞ!」


 ヴィオラが槍を手に取った。


「二人とも、さっき言ったことを忘れないで」


「「はい」」


 テオドールも杖を構える。


 ルシアンは剣へ手をかけた。


 門が開く。


 第三隊と第四隊の騎士たちが砦の外へ展開していった。


 既に前方から無数の魔物が迫っている。


 その中には人の姿も混じっていた。


 魔族だ。


「多いな……」


 テオドールが呟く。


「来るよ!」


 アリシアが声を上げた。


 直後、魔物の群れが押し寄せた。


「はぁっ!」


 ヴィオラの槍が一体を貫く。


 アリシアも剣を抜き、迫ってきた魔物を斬り伏せた。


「テオドール!」


「分かってます!」


 杖を向ける。


 雷が走った。


 前方にいた複数の魔物をまとめて飲み込む。


 倒れた魔物の横を抜け、さらに別の個体が迫る。


 そこへルシアンが踏み込んだ。


 一閃。


 魔物の身体が崩れ落ちる。


「次!」


 ヴィオラの声。


 戦闘は途切れない。


 次々と魔物が押し寄せてくる。


 その多くはSクラス。


 この場にいる騎士たちなら十分に対応できる。


 だが。


「大きいのが来るぞ!」


 前方から巨大な魔物が突進してきた。


 周囲にいた魔物を押し退けながら進んでくる。


「SSクラス!」


「第三隊、前へ!」


 複数の騎士がすぐに動いた。


 一人では受けない。


 前方の騎士が攻撃を逸らし、その横から別の騎士が斬りつける。


 さらに後方から魔法。


 巨大な魔物の動きが止まる。


 そこへ攻撃が集中した。


 轟音と共に巨体が地面へ倒れる。


「すごい……」


 テオドールが僅かに目を見開く。


「見惚れない!」


「っ、はい!」


 ヴィオラに言われ、すぐに前へ意識を戻す。


 魔物だけではない。


 魔族も混ざっている。


 剣を持つ者、魔法を放つ者、魔物を盾にして動く者。


 これまで戦ってきた相手とは明らかに違った。


「テオドール、右!」


 アリシアの声。


「っ!」


 炎が飛んでくる。


 テオドールが横へ跳んだ。


 着地と同時に杖を向ける。


「そこだ!」


 風が魔族を吹き飛ばした。


 すぐにレイモンドの魔法が追撃する。


 魔族が倒れた。


「今のは悪くない」


「ありがとうございます!」


「でも周りも見なよ」


「はい!」


 ヴィオラが言うより先に注意され、テオドールが苦笑する。


 その間にも戦いは続く。


 第三隊と第四隊は砦の周辺から大きく離れない。


 敵を倒しても追わない。


 押し返し、また来れば迎え撃つ。


 あくまで防衛。


 第一隊が到着するまでは、それでいい。


 しかし、ルシアンは戦いながら、敵のさらに奥へ意識を向けていた。


 強い気配がいくつもある。


 この場に出てきている者たちとは明らかに違う。


 その中でも特に強いものが一つ。


 続いて二つ。


 さらに四つ。


 まだこちらの様子を見ている。


「ルシアン!」


「はい!」


 ヴィオラの声に応え、迫ってきた魔物を斬る。


 もちろん、それを表情には出さない。


 今のルシアンはアーカディアの学生としてここにいる。


 必要以上のことをするつもりはなかった。


 しばらく戦闘が続く。


 魔物を倒し、魔族を退ける。


 第四隊の騎士たちに囲まれながら、テオドールも必死についていく。


「はぁ……はぁ……」


「まだ大丈夫?」


 アリシアが尋ねる。


「はい。まだいけます」


「無理そうなら言ってね」


「ありがとうございます」


「来る」


 レイモンドが短く言った。


 その声に全員が前を見る。


 魔物の群れ。


 その間を縫うように、一人の魔族が歩いてくる。


 周囲の魔物とは違う。


 近づいてくるだけで分かる。


「……強い」


 テオドールが呟いた。


 ヴィオラの表情も変わる。


「全員、気を抜かないで」


 魔族が足を止めた。


 その視線がルシアンたちへ向けられる。


 そして、ゆっくりと武器を構えた。


 この戦場を指揮する者の一人。


 SSクラスの魔族。


 その一角が――ルシアンたちの前へ姿を現した。


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