表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第2章
40/179

第39話

第39話


 王都を出てから、一ヶ月が経っていた。


 徒歩での移動。休息と戦闘、意図的な迂回。そのすべてが積み重なり、距離以上に時間がかかっている。すでに国境は越えていた。アルケシア王国の外。管理の行き届かない土地では道も曖昧になり、魔物の気配は明確に濃くなっている。


 視界の先には山岳地帯。鋭く連なる岩肌。空気は冷え、風も強い。


(……着いたか)


 正確には入り口。ここから先が本番だった。


 その時、空気がわずかに乱れる。


(……来る)


 上からの気配。羽音。ハーピーが四体、低空を滑るように接近してくる。単体ならCだが、群れればB相当。


 ルシアンは動かない。一体目が突っ込む。爪を最小限で躱し、踏み込みと同時に一閃。翼を断たれ、落ちる。続けて二体目が急降下するが、視線だけで捉え、同じく斬り落とす。


 残り二体は距離を取り、鳴き声で連携を取る。左右から挟む動き。


(悪くない)


 だが遅い。片方へ踏み込み、間合いを潰す。触れた瞬間、黒が食い込む。喰らう。抵抗は一瞬で途切れ、存在ごと崩れる。もう一体は怯み、逃げに入るが、風で加速して距離を詰め、そのまま斬り落とした。


 静寂が戻る。


(……問題ない)


 流れ込む力を確認する。無駄が減り、効率は確実に上がっている。だが、それでも足りない。


 その時、別の気配が近づく。重い。ゆっくりだが確実に圧を伴っている。


 岩陰から現れたのはグレイベア。Aランク。低く唸り、次の瞬間には突進してくる。巨体に似合わぬ速度。


 ルシアンは横へずれる。地面が砕け、衝撃が走る。振り下ろされる前脚を躱しながら間合いへ入り、斬る。だが浅い。


(硬いな)


 一撃では落ちない。なら削る。


 距離を取り直し、再び突進してきた瞬間に合わせて踏み込む。すれ違いざまに腕へ触れる。黒が食い込み、内側から削るように力を奪う。


(抵抗が強い)


 だが確実に削れている。動きが鈍る。それで十分だった。


 三度目の突進は明らかに遅い。ルシアンは正面から踏み込み、首元へ深く斬り込む。血が噴き出す。それでも倒れない。反撃が来るが、すでに見えている。回避。


 そしてもう一度、間合いへ。


 触れる。


 今度は逃がさない。黒が深く食い込み、内側から喰い破る。抵抗はあったが、押し切る。巨体が揺れ、崩れ、そのまま地に沈んだ。


 完全に沈黙。


 ルシアンは静かに息を吐く。


(……問題ない)


 Aランクも確実に処理できる。時間はかかるが、負ける要素はない。


 視線を上げる。山岳地帯は目前だった。岩と風と、濃い魔力。


(ここから先だ)


 ドワーフの山岳地帯。その奥にある場所。神に示された地点。


 足りないものが、そこにある。


 ルシアンは歩き出す。風は冷たく、空は高い。だが足は止まらない。ただ前へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ