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果てなき世界  作者: 影川明空人
第9章 学園2年目 大規模試験編
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第398話

第398話 


 グランヴェルが訓練場の中央へ出る。


 その向かいにはアレス。


「久しぶりだな、グランヴェル」


「ああ」


 グランヴェルが剣を抜く。


「武闘大会では見ているだけだったな」


「そうだな」


「ならばちょうどいい」


 グランヴェルの口元が僅かに上がる。


「今の俺がどこまで通じるか、確かめさせてもらう」


 アレスも剣を抜いた。


「来い」


 ライナーが二人を見る。


「始めろ」


 先に動いたのはグランヴェルだった。


 一気に間合いを詰める。


 振り下ろされた剣を、アレスが受け止めた。


 甲高い音が響く。


 すぐにグランヴェルが剣を返す。


 二撃目、三撃目。


 アレスがそれを受け、流す。


 そのまま踏み込み、反撃。


「っ!」


 グランヴェルも剣を合わせる。


 激しい剣戟が始まった。


 一合、二合、三合。


 互いに正面から打ち合う。


「やっぱり強いな」


 戻ってきたレオンが二人を見つめる。


『ウン!』


 グランヴェルの攻撃は速い。


 だが、アレスはその全てに対応していた。


 剣を受け、流し。


 隙を見つければ反撃する。


 グランヴェルもそれを受けながら、攻撃を続けていく。


「はぁっ!」


 グランヴェルが強く踏み込む。


 アレスが受け止める。


 剣と剣がぶつかり合い、二人はほぼ同時に離れた。


「……やはり、このままでは足りんか」


 グランヴェルが呟く。


 そして。


「力を貸せ」


 その声に応えるように、火の中位精霊が姿を現した。


 周囲の魔力が揺らぐ。


 グランヴェルの剣を炎が包んだ。


 赤い炎。


 それが精霊の力を受け――黄金へと変わっていく。


「来たな」


 レオンが呟いた。


 武闘大会でも見た黄金の炎。


 だが。


「……前より強い」


 すぐに違いが分かった。


 燃え上がる黄金の炎。


 その勢いも、放たれる熱も、あの時を上回っている。


「行くぞ!」


 グランヴェルが地面を蹴った。


 黄金の軌跡が走る。


 アレスが剣を合わせた。


 轟音。


 黄金の炎が爆ぜる。


 熱風が周囲へ広がった。


『アツイ!』


「すごいな……」


 レオンが目を細める。


 多少の熱ならば、身体強化をしていれば問題にはならない。


 それは周囲で見ている第一隊の騎士たちも同じだ。


 だが、グランヴェルの炎はそこでは収まらなかった。


「はぁぁっ!」


 さらに剣を振るう。


 アレスが受け流す。


 黄金の炎が地面を走った。


 グランヴェルが追撃。


 アレスが避ける。


 剣が地面を掠め、焼け焦げた跡を残す。


 戦いが続くほど、周囲の温度が上がっていく。


「少し離れるぞ」


 第一隊の騎士の一人が言った。


「ああ。その方がいいな」


 戦いを見ていた騎士たちが少しずつ距離を取る。


 レオンたちもそれに続いた。


「ここまで離れてても分かるな」


「ええ」


 レティシアも黄金の炎を見つめている。


「武闘大会の時より、明らかに火力が上がってるわ」


 訓練場の中央。


 アレスは黄金の炎を前にしても退かない。


 グランヴェルの剣が迫る。


 正面から受けずに流す。


 返す剣でグランヴェルを狙う。


「っ!」


 グランヴェルが防ぐ。


 そこから再び攻撃へ。


 黄金の炎を纏った剣が何度もアレスへ襲いかかる。


「随分と強くなったな」


 アレスが言った。


「当然だ!」


 グランヴェルが剣を振るう。


「俺がいつまでも同じ場所にいると思うな!」


「思ってないさ」


 アレスが身体をずらす。


 黄金の剣が横を通過する。


 その瞬間には懐へ踏み込んでいた。


「!」


 グランヴェルが咄嗟に剣を戻す。


 激突。


 今度はグランヴェルが押し返された。


 数歩下がり、踏み止まる。


「まだだ!」


 火の中位精霊の力を受け、黄金の炎がさらに燃え上がった。


 その様子を見ていた第一隊の騎士が感嘆の声を漏らす。


「大したもんだな」


「ああ。まだ学生だろ?」


「将来有望だな」


「あれだけの火力を持ってるなら、卒業する頃が楽しみだ」


 フェルディナントも笑みを浮かべる。


「随分派手になってきたね」


「そうね」


 カトレアもグランヴェルを見つめる。


「前に見た時より強くなってる」


 ライナーも黙って戦いを見ていた。


 その視線が僅かに細くなる。


「いい火力だ」


 短く呟く。


 中央ではさらに戦いが激しくなる。


 グランヴェルが黄金の炎と共に攻める。


 アレスがそれを凌ぐ。


 一撃、二撃、三撃。


 炎が爆ぜるたびに熱が広がった。


「はぁっ!」


 グランヴェルが大きく剣を振るう。


 アレスは僅かに身体をずらし、その一撃を躱した。


 黄金の炎がすぐ横を通過する。


「……熱いな」


 アレスが小さく呟く。


 確かに熱い。


 武闘大会で見た時よりも遥かに。


 だが、まだだ。


 あの男ほどではない。


 力も、この熱も。


「どうした!」


 グランヴェルが迫る。


「余所見をしている暇があるのか!」


「ああ。悪い」


 アレスが剣を振るう。


「っ!」


 グランヴェルが受け止める。


 衝撃に身体が下がる。


 それでもすぐに踏み止まった。


「まだまだ!」


 グランヴェルが再び前へ出る。


 アレスも迎え撃つ。


 剣と剣が激突。


 黄金の炎が弾けた。


「おお……!」


 周囲から声が上がる。


 戦いはさらに激しさを増していく。


 グランヴェルの炎も衰えない。


 アレスもその攻撃を凌ぎながら反撃を重ねる。


 ここからさらに盛り上がる。


 そう思われた、その時。


「そこまでだ」


 ライナーの声が響いた。


 グランヴェルが動きを止める。


「……まだやれるぞ」


「勝敗を決めるための戦いではない」


 ライナーが答える。


「お前の実力は十分分かった」


「…………」


 グランヴェルは不満そうだったが、剣を下ろした。


 火の中位精霊の力が離れ、黄金の炎も消えていく。


 アレスも剣を収めた。


「強くなったな」


「次は最後まで付き合ってもらうぞ」


「ああ」


 グランヴェルも剣を収める。


 ライナーがレオンたち五人を見渡した。


「これでお前たちの実力は分かった」


 レオンたちの表情が引き締まる。


「明日からは、それぞれに合った任務を与える」


「はい!」


「グランヴェル、レオン、レティシア」


 三人がライナーを見る。


「お前たちは前線に出てもらう」


 レオンが僅かに目を見開く。


「前線……」


「ああ。第一隊が最も多く戦う場所だ」


 グランヴェルは当然とでも言うように腕を組んでいた。


 レティシアも真剣な表情で頷く。


「シャロン、ディオン」


「はい」


「はい!」


「お前たちはその少し後方だ」


 二人も頷いた。


 ライナーは五人を順番に見る。


「ここから先は訓練ではない」


 その言葉に、全員の表情が変わる。


「明日から実際の任務に参加してもらう」


「はい!」


 レオンが力強く答えた。


『ガンバル!』


 ルーチェも元気よく拳を上げる。


 こうして、第一隊での最初の一日が終わった。


 明日からは――実戦が始まる。


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