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果てなき世界  作者: 影川明空人
第8章 学園2年目 修行編
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第385話

第385話


 聖国リュミエル。


 この地を訪れ、修行を始めてからもうすぐ三ヶ月が経とうとしていた。


 アーカディア襲撃によって休校となっていた学園も、あと数日もすれば再開される。


 長かった修行も、そろそろ終わり。


 明日にはリュミエルを発ち、アーカディアへ戻る予定だった。


 教会本部に併設された訓練場。


 そこでは今日も、激しい剣戟が響き渡っていた。


「はあああああっ!」


 レオンが地面を蹴る。


 一気に距離を詰め、剣を振り抜く。


 対するラグナルは盾を構えた。


 ガァンッ!


 金属同士が激突し、重い音が響く。


 ラグナルの身体が僅かに揺れた。


「まだだ!」


 レオンは止まらない。


 一撃、二撃、三撃。


 盾へ攻撃を叩き込みながら、僅かに生じた隙へ剣を滑り込ませる。


 だが。


「甘い」


 ラグナルの剣が動く。


「っ!」


 レオンは咄嗟に身体を捻った。


 剣先が頬を掠める。以前なら、これで終わっていた。


 しかし。


「そこ!」


 体勢を崩しながらも踏み込み、ラグナルの胴へ剣を振るう。


 ガキンッ!


 盾が間に合う。


 再び二人が離れた。


「はぁ……はぁ……」


 レオンは荒く息を吐く。


 それでも、その瞳から闘志は消えていない。


 ラグナルは盾越しにレオンを見据えた。


「随分と良くなった」


「本当ですか?」


「ああ」


 ラグナルは素直に頷く。


「最初の頃なら、今ので三度は倒れている」


「三度もですか……」


「事実だ」


「そこは二度くらいにしてほしいですよ」


「嘘を言って何になる」


「相変わらず真面目ですね!」


 そう言いながらも、レオンは笑っていた。


 三ヶ月前とは明らかに違う。


 レオンは既にSS中位。SS上位の領域すら見え始めている。


 勇者として、確実に成長していた。


 そして、成長したのはレオンだけではない。


「ぬおおおおおっ!」


 別の場所では、ガイウスがセシルと共にセレナの猛攻を受けていた。


 ガイウスはS上位。


 以前より防御力に磨きがかかり、守護の神バルティアの加護も少しずつ使いこなせるようになっている。


 テオドールもまた、エルヴィンとの修行によってS上位へ。


 魔法の威力だけではない。


 発動速度、魔力制御、近接戦闘との組み合わせ。


 以前より遥かに戦い方の幅が広がっている。


 ノエルもS上位。


 リシェルから偵察、潜入、高速戦闘の技術を徹底的に叩き込まれた。


 元々得意としていた分野だけに、その成長は著しい。


 そしてフィアナ。


 マリアの指導によって、回復魔法と支援魔法は以前とは比べものにならないほど洗練されていた。


 単純な回復量だけではない。


 発動速度、魔力効率、複数人への同時支援。


 戦況を読みながら必要な魔法を選択する判断力。


 聖女として、その力は確実に次の段階へ進んでいる。


「随分と強くなりましたね」


「ん?」


 聞き慣れた声にレオンが振り返った。


「ルシアン!」


 訓練場の入口。


 そこにルシアンが立っていた。


「戻ってたのか!」


「はい。つい先ほど」


 ルシアンが歩いてくる。


 彼がリュミエルへ本格的に戻ってきたのは一ヶ月ほど前。


 それ以降も教皇からの依頼を受けて各地へ出向くことが多く、訓練場に顔を出さない日も珍しくなかった。


「また教皇様の依頼?」


 ノエルが尋ねる。


「ええ。そんなところです」


「相変わらず忙しそうだな」


 ガイウスが苦笑する。


「まあ、それも一段落しました」


 ルシアンは訓練場を見渡す。


「それより、皆さん。明日にはここを発ちますから、そろそろ荷物をまとめておいた方がいいですよ」


「ああ、そうだったな」


 レオンが剣を肩に担ぐ。


「もう三ヶ月かぁ」


「早かったね」


 ノエルも頷く。


「最初は三ヶ月もあるって思ってたのに」


「それだけ充実していたということでしょう」


 フィアナが微笑む。


「アーカディアへ戻ったら、すぐ学園も再開か」


 ガイウスが伸びをする。


「また忙しくなりそうだな」


 そんな会話を聞きながら、ルシアンは小さく笑った。


「皆さん、本当に強くなりましたね」


 その一言に、レオンが反応した。


「……よし」


「はい?」


 レオンが剣を構える。


 その顔には、分かりやすい笑みが浮かんでいた。


「ルシアン。俺たちの修行の成果、見せてやるよ」


 ルシアンは数秒黙る。


「……もしかして」


「ああ!」


 レオンは剣先をルシアンへ向けた。


「勝負しよう!俺たち全員と!」


 ガイウスが目を丸くする。


「おい、俺たちもかよ!」


「当然だろ!」


「勝手に決めんな!」


「いいじゃん。私もやりたい」


 ノエルは乗り気だった。


「俺も構わない」


 テオドールも杖を手にする。


 フィアナは少し困ったように笑った。


「私は後ろから支援すればいいのでしょうか?」


「もちろん!」


「……もうやることになってるんですね」


 ルシアンは小さく息を吐く。


 そして。


「分かりました」


 訓練場の中央へ歩いていく。


「それでは」


 振り返る。


「三ヶ月の成果、見せてもらいましょうか」


「おう!」


 レオンが嬉しそうに剣を構えた。


 ガイウス、テオドール、ノエル、フィアナ。


 五人もそれぞれ戦闘態勢へ入る。


 三ヶ月前、ゼルキス一人を相手に、何もできなかった五人。


 だが今は違う。


 その成長がどれほどのものなのか。


 確かめるための最後の戦いが始まろうとしていた。


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