表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第8章 学園2年目 修行編
378/389

第377話

第377話


 アシュレイは言葉を失っていた。


 長き時を生きる魔王である。


 どれほどの強者と相対しても表情を変えることはなかった。


 だが今、目の前の青年は自分が何百年も求め続けた答えを口にした。


「……詳しく聞かせてもらおう」


 その一言に、ルシアンは静かに頷く。


「ありがとうございます」


 ルシアンは邪神の封印が遠くない未来に破られること。


 そして、邪神はほぼ確実に復活してしまうことを語った。


 さらに、この世界が人間と魔族の争いによって均衡を保っている仕組み。


 神々から託された使命、勇者レオンを育てている理由。人間と魔族、さらには全種族が協力しなければ邪神には勝てないこと。


 一切隠すことなく話し続ける。


 そして最後に、自らの力について口を開いた。


「私には、ある能力があります」


 アシュレイとアジ・ダハーカが静かに耳を傾ける。


「対象の力を吸収し、自らの力へ変える能力です」


 その場の空気が変わった。


「神々から託された力も、この能力によって受け継ぎました」

「そして」


 ルシアンは真っ直ぐ二人を見据える。


「私は邪神を復活させます。復活した瞬間、その力を吸収し、新たな邪神となる」


 アシュレイもアジ・ダハーカも黙ったまま聞いていた。


「その後、勇者レオンたちが私を倒すことで、

邪神そのものを世界から消し去ります」


 静寂。


 風だけが霊峰を吹き抜ける。


 しばらくして口を開いたのはアジ・ダハーカだった。


『なるほど、おおよその計画は理解した』


 黄金の瞳がルシアンを見据える。


『だが、一つ疑問がある』


「何でしょうか」


『お前に、力を吸収し己の力へ変える能力があることは理解した』

『しかし』


 その巨体がわずかに動く。


『邪神相手にも、それは可能なのか?』


 ルシアンは黙って聞いている。


『お前の力が神々に匹敵することも理解した。だが邪神は、それよりなお強大だ』

『神々ですら力を合わせ、封印することしかできなかった存在なのだからな』


 その問いは至極もっともだった。


 アシュレイも同じ疑問を抱いていた。


 ルシアンは静かに息を吐く。


「……今の私では」


 一拍置く。


「まだ絶対とは言い切れませんね」


 その答えに、二人は少し驚いた。


 否定もせず、虚勢も張らない。ただ事実だけを口にする。


「もっと強くなる必要があります」


 ルシアンは素直に認めた。


 今の自分では足りない。


 だからこそ各地を巡り、準備を進めている。


 アシュレイが静かに口を開く。


「では、仮にだ」

「お前の能力が邪神に通じず、ただ邪神が復活しただけだった場合、どうするつもりだ?」


 その場の空気が張り詰める。


 計画が失敗した時、世界は終わる。


 その可能性を、魔王は見逃さなかった。


 ルシアンは迷わず答える。


「私ごと別空間へ隔離します」


 あまりにもあっさりとした答えだった。


「邪神を私が完全に取り込めなかったとしても、私自身を隔離できれば、少なくとも世界への被害は最小限に抑えられます」


 アシュレイは目を細める。


「成功する確率は?」


「現状では」


 ルシアンは静かに答えた。


「五分五分、といったところです」


 その数字に、二人は沈黙した。


 決して高くはない。


 だが、不可能でもない。


 ルシアンは続ける。


「ですが邪神の復活は、そう遠くない未来に訪れます。その時になって、今より状況が整っている保証はありません」

「むしろ準備する時間は、残り少ないでしょう」


 静かに、それでいて力強く言葉を紡ぐ。


「だから私は、今動きます。失敗を恐れて何もしなければ、世界に残るのは確実な滅びだけです」


 そして、ルシアンは魔王と古竜の両方を見据えた。


「どうでしょうか」

「私の計画に――」

「協力していただけませんか」


 霊峰に再び静寂が訪れる。


 その答えを決められる者は、この場にいる二人だけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ