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果てなき世界  作者: 影川明空人
第8章 学園2年目 修行編
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第362話

第362話


 出立の日。


 勇者パーティに加え、セシルも同行することとなった。


 聖国リュミエル出身の彼は、聖騎士候補として修練を積む少年であり、フィアナとは幼い頃から親交がある。


「皆様、本日からよろしくお願いいたします」


 セシルは勇者パーティへ向かって丁寧に一礼した。


 レオンは笑顔で応じる。


「ああ! 一緒に強くなろう!」


「はい。微力ながら力を尽くします」


 ガイウスが小声で笑う。


「相変わらず礼儀正しいな」


 フィアナも穏やかに微笑んだ。


「セシルは昔からこうなんです」


「恐縮です」


 少し照れたように笑うセシル。


 その様子に一同も自然と笑みを浮かべた。


 荷物は最低限。


 食料や生活用品は、ヒューギルから借りた空間魔法の付与された袋へ収納されている。


「便利だな、この袋」


 ガイウスが感心したように言う。


 ルシアンは頷いた。


「容量にも限界はありますが、旅には十分でしょう」


「では、行きましょう」


 一行はアーカディアを後にした。


 目的地は――聖国リュミエル。


 修行も兼ねているため、移動は徒歩。


 一定の速度で軽く走りながら街道を進んでいく。


 街道はよく整備されており、魔物の姿も多くはない。


 それでも時折、茂みから魔物が姿を現す。


「来ました!」


 飛び出してきたのはCランクのウルフだった。


 レオンとセシルが同時に前へ出る。


「俺が行く!」


「では、自分は援護します」


 レオンが正面から斬り込み、体勢を崩したところへ、セシルが確実な一撃を加える。


 ウルフはそのまま倒れ伏した。


「息ぴったりじゃないか」


 ガイウスが感心する。


「レオン様の動きが分かりやすかったので」


 セシルは謙虚に答えた。


 途中で数体のゴブリンやBランクの魔物とも遭遇したが、今の彼らにとって大きな脅威ではない。


「前ならもう少し苦戦してた相手なんだけどな」


 ガイウスが肩を回す。


「私たちも少しずつ成長しているということですね」


 フィアナが微笑む。


 セシルも頷いた。


「皆様とてもお強いです。自分も負けていられません」


 昼は移動。


 夕方になると野営の準備を始める。


 食事を終えると、自然と模擬戦が始まった。


「セシル!一本勝負だ!」


 レオンが木剣を構える。


 セシルも一礼して剣を抜いた。


「よろしくお願いいたします」


 乾いた音が夜の草原へ響く。剣と剣が何度も交差する。


 レオンは力強く攻める。セシルは堅実に受け流し、隙を窺う。


「そこまで」


 ルシアンが静かに告げた。


 二人は剣を下ろす。


「レオン、踏み込みが少し大きいですね。もう少し小さくすれば、次の動きへ繋げやすくなります」


 レオンは頷いた。


「なるほど」


 ルシアンは一瞬だけセシルへ視線を向けたが、すぐに言葉を続けることはなかった。


 セシルもまた、軽く会釈するに留める。


 その後もガイウスとノエル、テオドールとセシル。


 組み合わせを変えながら模擬戦を繰り返す。


 ルシアンは主に全体の流れを見ながら、必要な場面でのみ簡潔な助言を与えていった。


 そうして昼は移動、夜は修練。そんな日々を数日続けた。


 そして街道の先に、巨大な白い城壁が姿を現す。


 陽光を受けて輝く神殿、幾重にも連なる尖塔、街中へ響く澄んだ鐘の音。


 セシルはその光景を見つめ、小さく息を吐いた。


「……帰ってきましたね、フィアナ様」


 フィアナも懐かしそうに微笑む。


「ええ、着きました。あれが私たちの故郷――聖国リュミエルです」


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