第360話
第360話
襲撃から数日が経った。
焼け跡には少しずつ活気が戻り始め、騎士や学生たちは街の復旧作業に追われていた。
アーカディア学園に設けられた診療所では、重傷者たちも次々と意識を取り戻していく。
レオンたちも例外ではなかった。
「いてて……」
ベッドから身体を起こしたレオンは、自分の腕をゆっくりと動かす。
傷はすでに癒えている。
だが、身体は思うように動かなかった。
オーバードライブの反動。
以前よりは軽くなっているものの、本調子には程遠い。
「まだ本格的に戦うのは無理そうだな……」
そう呟くレオンへ、ガイウスが笑う。
「生きてるだけで十分だろ」
「そうだけどさ」
テオドールも身体を起こしながら頷いた。
「以前より反動は減っているようだな」
「ああ」
レオンもそれは感じていた。
以前なら、もっと長く身体を動かせなかった。
少しずつではあるが、自分も成長している。
しかし、ゼルキスとの差を思い出す。あの圧倒的な実力差。
自然と拳を握り締めた。
その時。
「そういえば」
レオンがルシアンへ視線を向ける。
「俺が気絶した後、どうなったんだ?」
ルシアンは少し考え、静かに答えた。
「私がゼルキスと戦っている最中、空に巨大な魔法陣が現れました。そこから放たれた光が、魔族や邪神教徒たちを攻撃したのです」
「それを受けて敵は撤退しました」
「巨大な魔法陣?」
ノエルが首を傾げる。
「ああ、それなら俺も聞いた」
テオドールが口を開く。
「診療所でも話題になっていた。街中の人が見ていたらしい」
ガイウスも思い出したように頷く。
「『神々しかった』とか、『まるで神様の奇跡だった』とか、そんな話ばっかりだったな」
フィアナは静かにその話を聞いていた。
あの日の光景。
そして、その光を生み出した人物。
視線だけをそっとルシアンへ向ける。
ルシアンは気付いているはずなのに、何も言わない。
約束を守る。
フィアナもまた、静かに口を閉ざした。
その日の午後、ヒューギルの名において、全学生へ正式な通達がなされた。
『今回の襲撃により、アーカディア及び学園は甚大な被害を受けた』
『復旧作業のため、アーカディア学園はしばらく休校とする』
『期間は、およそ三ヶ月を予定している』
学園内がざわつく。
ヒューギルは続けた。
『この期間、故郷へ帰るもよし、アーカディアの復興を手伝うもよし、修行の旅に出るもよし。各自、自由に過ごして構わない』
『ただし、その期間に成したこと、それを証明できる成果は、今後の評価へ加味するものとする』
学生たちはそれぞれ今後について話し始める。
一方、勇者パーティは静かな部屋に集まっていた。
レオンが拳を握る。
「悔しい。結局、俺たちはゼルキスに何もできなかった」
ガイウスも苦笑する。
「ボロ負けだったな、今のままじゃ勝てない」
ノエルも腕を組む。
「また同じ相手と戦っても結果は変わらない」
テオドールも静かに頷いた。
「修行は必要だ」
フィアナも決意を込めて言う。
「もっと強くならなければいけません」
レオンは全員を見渡す。
「よし、修行をしよう!どこへ行く?」
少しの沈黙。
その中で、ルシアンが静かに口を開いた。
「聖国リュミエルへ行きましょう」




