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果てなき世界  作者: 影川明空人
第7章 学園2年目 武闘大会編
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第349話

第349話


 レオンの猛攻は止まらない。


 光を纏った剣が幾重にも閃き、水魔法が斬撃へ重なり、絶え間なくゼルキスへ襲い掛かる。


 未来感知、ルーチェとの完全に近い同調、オーバードライブによる限界突破。


 その全てが合わさった攻撃は、まさに勇者の切り札だった。


 ゼルキスは笑っている。


 楽しそうに、心の底から嬉しそうに。


 魔力で形成した爪で次々と斬撃を受け流し、時には身体を捻って紙一重でかわしていく。


 おそらくドラクスが相手なら。


 いや、他の四天王が相手であれば、この猛攻で勝負は決していただろう。


 しかし、相手はゼルキスだった。


 ゼルキスは実力を隠している。世間に知られている実力はSSS下位。


 四天王最強と謳われるガルドレインと同格。


 そう思われている。


 だがそれは偽りだった。


 ゼルキスの本当の実力はSSS中位。それもSSS上位へ届きかねない領域。


 その事実を知る者はほとんどいない。


 魔族では魔王のみ。


 そして人間側では、ルシアンだけだった。


(これでも……)


 レオンは歯を食いしばる。


(これでも届かないのかっ……!)


 ゼルキスは嬉しそうに叫ぶ。


「いい攻撃だよぉ!もっと!もっとだよぉ!」


 激突。


 剣と爪、魔法と魔法。衝撃波が何度も結界を揺らす。


 だが、その攻防は唐突に終わりを迎えた。


「っ……!」


 レオンの身体から光が消える。


 膝をつく。


「くっ……そっ……」


 オーバードライブの効果が切れた。


 全身を凄まじい反動が襲う。


 筋肉は悲鳴を上げ、魔力は枯渇寸前。


 もう、一歩たりとも動けなかった。


 ゼルキスは少し残念そうに肩を落とす。


「楽しくなってきたところだったのに、もう終わり?」


 返事はない。


 レオンは呼吸するだけで精一杯だった。


 ゼルキスはゆっくりと歩み寄る。


「ごめんねぇ。たぶん俺以外の四天王が相手だったら、君が勝ってたよ」


 その言葉は嘘ではない。


 純粋な賞賛だった。


 だからこそ残酷だった。


 ゼルキスは魔力を爪へ集める。黒紫色の魔力が指先から伸び、鋭い刃を形作る。


「楽しませてくれたお礼に、痛くないように殺してあげるね」


 爪が振り下ろされる。


「やめて!」


 フィアナが飛び出した。


 間に合わない。そう思った、その瞬間。


 ――――バキィィィン!!


 結界に亀裂が走る。


 次の瞬間、結界そのものが粉々に砕け散った。


「っ!?」


 ゼルキスが反応するより早く。


 黒い影が一閃する。


 轟音。


 ゼルキスの身体が大きく吹き飛び、建物を突き破っていった。


 土煙が舞い上がる。


 静寂。


 そして一人の青年が、レオンたちの前へ静かに降り立った。


「遅くなりました」


 その聞き慣れた声に、倒れ伏したレオンは思わず苦笑する。


「……ほんとに遅いよ」


 ルシアンは表情を変えず、淡々と答える。


「申し訳ありません」


 ついに、ルシアンが戦場へ到着した。


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