第348話
第348話
レオンはゆっくりと立ち上がる。全身が悲鳴を上げていた。
それでも、その瞳から闘志は消えていない。
ゼルキスはその様子を見て、口元を吊り上げた。
「その目だよ。やっと面白くなってきた」
レオンは静かに息を整える。
脳裏に浮かぶのは、ルシアンの言葉だった。
『それは基本的に使用禁止です』
『使うたびに行動不能になるのでは、倒しきれなかった時に詰みます』
『いまレオンに必要なのは基礎技術の向上です』
だが。
(ここで使わなければ、全員死ぬ)
レオンは左手にはめた指輪へ視線を落とす。
ダンジョンで手に入れた魔道具。魔力を蓄えてきた切り札。
そして。
「――オーバードライブ」
瞬間、レオンの身体から膨大な魔力が噴き上がる。
青白い光が全身を包み込み、地面が震えた。
限界突破、身体能力、魔力、反応速度、未来感知。その全てが限界を超えて引き上げられていく。
さらにルーチェとの同調率も急激に高まる。
指輪に蓄えられていた魔力も一気に解放された。
だが、この力は長くは続かない。
数分。
いや、全力で戦えばそれすら持たない。
そして効果が切れれば、身体はしばらく動かなくなる。
まさに最後の切り札だった。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
レオンが地を蹴る。
爆発するような踏み込み。
一瞬でゼルキスの懐へ入り込む。
「!」
ゼルキスの目が僅かに見開かれた。
剣閃。
鋭い一撃がゼルキスの胸を掠める。
赤い血が宙へ舞った。
ゼルキスは傷口へ手を添える。
「へぇ」
嬉しそうに笑う。
フィアナの祝福、オーバードライブ、そして指輪に蓄えられていた膨大な魔力。
それら全てが重なったことで。
今この瞬間だけ、レオンは擬似的にSSSランクの領域へ到達していた。
「はぁぁぁっ!」
レオンは止まらない。
剣を振るう。光魔法を纏わせ、水魔法を重ねる。斬撃と魔法が一体となった連撃がゼルキスへ降り注ぐ。
ゼルキスも笑みを浮かべながら迎え撃つ。
魔力で形成した漆黒の爪が剣と激しくぶつかる。
火花が散る。
衝撃波が結界を揺らす。
剣戟、魔法、高速戦闘。両者の攻防は先程までとは比較にならない速度へ達していた。
ゼルキスは心の底から楽しそうに笑う。
「いいねぇ!」
さらに爪を振るう。
「そう来なくっちゃ!」




