第347話
第347話
結界の中。
激戦の末、立っている者は二人だけだった。
レオン、そしてフィアナ。
テオドールは地面に倒れ伏したまま動かない。ノエルも短剣を握ったまま意識を失っていた。ガイウスは盾を手放し、血を流しながら倒れている。
――ガイウス。
最初に倒れたのは彼だった。
ゼルキスの爪がレオンへ迫る。咄嗟にガイウスが前へ飛び出した。
「レオン!」
盾で一撃目を受け止める。
凄まじい衝撃だったが耐えた。
しかし、二撃目。
横薙ぎに振るわれた爪が盾ごとガイウスの身体を切り裂いた。
「ぐぁっ……!」
そのまま吹き飛ばされ、壁へ激突。
動かなくなった。
――ノエルとテオドール。
二人は後方から援護を続けていた。
風魔法、雷魔法、火魔法。
絶え間なくゼルキスへ撃ち込む。
しかし。
「遅いよ」
レオンの前にいたはずのゼルキスが消えた。
次の瞬間には二人の背後。
いつもなら。
いつもなら、ルシアンが気付き、守ってくれていた。
だが、今はいない。
「え――」
ノエルが振り返るより早く。
鋭い一撃が二人をまとめて吹き飛ばした。
フィアナはすぐに回復魔法を施した。
命に別状はない。
それでも二人は目を覚まさなかった。
そして現在、レオンも既に全身傷だらけだった。
何度も斬られ、何度も殴られ、それでも立ち上がる。
フィアナも支援魔法だけではなく、光魔法で応戦していた。
しかし、魔法は確かに当たる。
それでも、ゼルキスは気にも留めない。
「うーん。痛くないねぇ」
笑いながら歩いてくる。
フィアナなら、いつでも倒せる。それなのに手を出さない。
レオンを回復させ続けるため、もっと遊ぶため。
レオンは歯を食いしばる。
「はぁぁぁっ!」
剣を振るう。
ゼルキスは紙一重でかわす。
反撃の拳が腹へめり込む。
「がはっ!」
さらに蹴り。
レオンの身体が地面を転がる。
ゼルキスはゆっくりと歩み寄る。
「ねぇ。もう終わり?」
レオンは睨み返す。
ゼルキスは笑った。
「絶対に俺のことを倒すんじゃなかったの?こんなんじゃ俺のことは倒せないよ?」
そして、無造作に振るわれた一撃。
レオンの身体は再び吹き飛ばされた。
「レオン!」
フィアナが駆け寄る。
ゼルキスは退屈そうに欠伸をした。
「聖女ちゃん、早く回復してあげてよ」
赤い瞳が細められる。
「つまんなくなってきたから、このままじゃ殺しちゃいそうだよ」
フィアナは震える手で回復魔法を発動する。
柔らかな光がレオンを包み込む。
傷は癒える。
だが、疲労までは消えない。
それでも、レオンは剣を支えにゆっくりと立ち上がった。
(このままじゃ勝てない。どうせ負けるなら――)
脳裏に浮かぶ、一つの技。
まだ使いこなせていない。
それでも。
(あれを使うしかない)




