第344話
第344話
ゼルキスは悪びれる様子もなく笑った。
「ルシアンの故郷を滅ぼしたの、俺なんだぁ」
そして少し首を傾げる。
「あー、でも滅ぼしたは言い過ぎかぁ。一応、街は直ってきてるらしいし」
その言葉に、勇者パーティ全員が息を呑んだ。
ルシアンは自分の過去をほとんど語らない。
だが一つだけ聞いていたことがある。
故郷が魔物の群れと魔族によって壊滅的な被害を受けたこと。
そして、その時に兄以外の家族を失ったこと。
レオンが剣を握る手に力を込める。
「お前が……お前がルシアンの家族を!」
ゼルキスはあっさりと頷いた。
「そうだよー。あれって何年前だっけ?五年だっけ?」
「……まあいいか」
まるで昨日の出来事でも思い返すような軽い口調だった。
「でもさぁ。あの時にルシアンと会えて、本当によかったよぉ」
赤い瞳が嬉しそうに細められる。
「ルシアンに会うまで、この世界ってすごく退屈だったんだけど、今はルシアンのことが楽しみなんだぁ」
レオンたちの表情が険しくなる。
ゼルキスは気にする様子もなく続けた。
「君ら知ってる?ルシアンって凄いんだよ!あの時はまだ子供だったのにさ、Sランクの魔物を倒しかけてたんだよ!」
楽しそうに笑う。
「最初は見てるだけのつもりだったんだけど、楽しそうだったから、ルシアンの前に出ちゃったんだよねぇ」
そう言うと、自分の上半身を指でゆっくりとなぞる。
「今でもあの時の一撃は覚えてるよぉ。本気じゃなかったとはいえ、あんな攻撃を受けたのは久しぶりだった。その時から退屈を壊してくれそうなルシアンに、期待してるんだぁ」
その言葉を聞いた瞬間、レオンの中で何かが切れた。
「……もういい」
低い声だった。
「お前は、絶対に俺たちが倒す」
テオドールも杖を構える。
「ああ、流石に不快だな」
ノエルは短剣を握り直した。
「うん。ちょっと嫌な気分」
ガイウスが盾を前へ出る。
「ルシアンがどれだけ苦しんだかも知らないで、楽しそうに話すな」
フィアナも静かに杖を掲げた。
「あなたは、人の悲しみさえ娯楽にしているのですね」
ゼルキスはその言葉を聞くと、嬉しそうに笑みを深めた。
「いいねぇ、その感情」
長い爪をゆっくりと構える。
「なら――」
「俺を楽しませてよ」




