第343話
第343話
結界の中にいる限り、逃げ場はない。
外から助けが来ることも、この結界がある限り期待できない。
レオンたちはゼルキスから目を離さず、集まる。
テオドールが小声で言った。
「どうする?」
レオンは静かに息を吐く。
「逃げられないんだから戦うしかない。時間を稼いで助けが来るのを待つか、俺たちでこいつを倒すかだ」
ノエルは苦笑する。
「こんなバケモノを私たちだけで倒す?前にボコボコにされたの忘れた?」
あの時の絶望は今でも忘れていない。
実力差は圧倒的だった。
しかしレオンは首を横に振る。
「俺たちだって、あの時のままじゃないだろ」
ガイウスも盾を構え直す。
「そうだよな、どうせやるしかない」
フィアナが杖を掲げる。
「支援魔法は任せてください」
レオンは頷いた。
「ああ、頼む」
柔らかな光が勇者パーティを包み込む。
身体能力強化、魔力強化、防御強化。
フィアナの祝福が全員へ降り注ぐ。
ゼルキスはその様子を楽しそうに眺めていた。
「相談は終わった?」
口元が大きく歪む。
「じゃあ、遊ぼっか」
瞬間、ゼルキスの姿が消えた。
「っ!」
レオンが反応するより早く。
鋭く伸びた長い爪がガイウスへ襲い掛かる。
ガイウスは咄嗟に盾を前へ出した。
激しい金属音。
火花が散る。
しかし、前回のように盾がひしゃげることはなかった。
「止めた!」
ガイウスが踏み止まる。
その隙を逃さず、レオンが横から斬り掛かった。
ゼルキスは軽く後方へ跳ぶ。
そこへ。
「今だ!」
テオドールの魔法が放たれる。
火、雷。二つの魔法が同時にゼルキスへ直撃した。
爆煙が上がる。
だが、煙の中から姿を現したゼルキスには傷一つなかった。
「うーん。ちょっと熱かったかなぁ」
その瞬間、ノエルが風を纏って一気に距離を詰める。
高速機動、目にも留まらぬ速さで短剣を振るう。
しかし、ゼルキスの目には全て見えていた。
片手を伸ばす。
ガシッ。
短剣ごとノエルの腕を掴む。
「つーかまーえた」
無邪気に笑う。
「ノエル!」
レオンが剣を振るう。
「おっとっと」
ゼルキスは素直に手を離し、大きく後ろへ跳んだ。
ノエルもすぐに距離を取る。
しばしの静寂。
そして、パン、パン、パン。ゼルキスが拍手を始めた。
「いい連携だねぇ。それに前よりみんな少し強くなってる」
心から嬉しそうだった。
「これならルシアンが来るまで楽しめそうだ」
その名前に、レオンが眉をひそめる。
「何故お前がルシアンを知ってる?」
ゼルキスは不思議そうに首を傾げた。
「あれ?知らないの?」
そして、悪戯でも打ち明けるような軽い口調で笑う。
「じゃあ教えてあげるよ」
一拍置いて。
ゼルキスは笑顔のまま言った。
「ルシアンの故郷を滅ぼしたの、俺なんだぁ」




