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果てなき世界  作者: 影川明空人
第7章 学園2年目 武闘大会編
343/389

第342話

第342話


 アーカディア市街。


 各地で激戦が続いていた。


 エイルとヴァルクレイン。


 両者の戦いもまた、熾烈を極めている。


 剣と剣が幾度もぶつかり合い、衝撃波が周囲の建物を揺らした。


 互いに一歩も譲らない。実力はほぼ互角。


「どうした」


 ヴァルクレインが薄く笑う。


「焦っているようだな」


 エイルは舌打ちする。


「当然でしょう。あなたと遊んでいる暇はないの」


 街では今も学生や市民が戦っている。


 一刻も早く助けへ向かわなければならない。


 しかし、ヴァルクレインはそれを理解した上で立ちはだかっていた。


「お前をここから動かさない。それが俺の役目だ」


 再び二人の剣が激突する。


 ◇ ◇ ◇


 一方、最も凄惨な戦場となっていたのは、ドラクスのいる区域だった。


 辺り一帯は崩壊している。


 建物は倒壊し、大地は抉れ、炎が燃え盛っていた。


 そこには多くの学生が倒れ伏している。


 四年生ロイド・ガルディア。


 “鉄壁の男”と呼ばれた男の巨大な盾は真っ二つに砕かれ、右腕は不自然な方向へ折れ曲がっていた。


 三年生ディルク・ヴァレンツ。


 重装鎧は原形を留めておらず、その巨体も血に染まっている。


 そしてリオルド。


 全身の骨が砕け、血だらけのまま建物へ叩き付けられていた。


 意識はある。だが、身体はもう動かない。


 脳裏へ蘇る、ほんの数分前の光景。


 ◇ ◇ ◇


「行くぞ!」


 リオルドが地面を蹴る。


 全身全霊、渾身の拳。身体の内部へ衝撃を浸透させる必殺の一撃。


 当たれば、普通の相手なら内側から破壊される。


 だが、ドラクスは受け止めることすらしなかった。


 拳を受けながら笑っている。


「お?いい拳じゃねぇか」


 傷一つない。


 その事実にリオルドの目が揺れた。


 その隙を埋めるようにロイドが前へ出る。


「下がれ!」


 巨大な盾を構え、ドラクスの拳を受け止める。


 次の瞬間。


 轟音。


 盾ごと腕が押し潰された。


「があぁぁっ!」


 ロイドの身体が吹き飛ぶ。


 続いてディルク。


「まだだぁぁぁ!」


 大剣を振り下ろす。圧倒的な膂力を乗せた一撃。


 しかし、ドラクスは片手で受け止めた。


「力はあるな」


 そう言って笑う。


 反対の拳がディルクの腹部へ突き刺さる。


 鎧ごと身体が折れ曲がり、数十メートル先まで吹き飛ばされた。


「ディルク先輩!」


 リオルドは叫びながら、再び踏み込む。


 残った力を全て拳へ込める。


「うおおおおぉぉぉっ!」


 全力。


 人生最高の一撃。拳は確かにドラクスを捉えた。


 しかし何も起きない。効いていない、一切通じていない。


 リオルドの顔から血の気が引いた。


(そんな……これでも……届かないのか……)


 ドラクスは楽しそうに笑った。


「悪くない一撃だった」


 そして拳を握る。


「じゃあな」


 振り抜かれた一撃。


 リオルドの身体は砲弾のように吹き飛び、建物へ激突した。


 そのまま崩れ落ちる。


 ◇ ◇ ◇


 回想が終わる。


 リオルドは霞む視界の中で立ち尽くすドラクスを見上げた。


 誰も止められない、誰も勝てない。


 そんな絶望が戦場を支配していた。


 その時だった。


 一つの影が戦場へ飛び込んでくる。


 土煙の中から現れた男は、倒れた学生たちを見渡し、小さく歯を食いしばった。


「……間に合わなかったか」


 ルミナス騎士団、アレス・グランツヴァルト。


 ドラクスの目が輝く。


「おぉ!お前とは少し前に戦ったな!たしか……アレスだったな!」


 アレスは剣を抜く。


「俺のことを覚えているのか」


 ドラクスは豪快に笑った。


「お前さんは強かったからな。次はお前が相手をしてくれるのか」


 アレスは静かに剣先を向ける。


「ああ、お前は俺が倒す」


 ドラクスは獰猛な笑みを浮かべ、大きく拳を鳴らした。


「いいねぇ!やっぱり強ぇ奴との戦いは最高だ!」


 炎が噴き上がる。


 次の瞬間、二人は同時に地を蹴った。


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