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果てなき世界  作者: 影川明空人
第7章 学園2年目 武闘大会編
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第329話

第329話


 武闘大会本戦二日目。


 準々決勝当日、闘技場は初日を上回る熱気に包まれていた。


 昨日勝ち上がった八名。


 ここから先は、一戦一戦が優勝へ直結する戦いとなる。


 観客席には各国の貴族や騎士、冒険者たちが集まり、開始を今か今かと待ち構えていた。


 その中には、守護者ヒューギルの姿もあった。


 普段は守護者の部屋にいることが多い彼だが、この日は特別に観客席の一角から試合を見守っている。


 そして、実況役の教員が高らかに宣言する。


「準々決勝第一試合!」

「四年生代表、アルト・セイリオス!」

「二年生代表、ノエル!」


 大歓声が湧き起こる。


 闘技場へ姿を現した二人は互いに向き合った。


 アルトは剣を静かに抜く。


「ここまで来た実力は認めよう。だが、俺も負けるつもりはない」


 ノエルも短剣を構える。


「私も勝つ」


「始め!」


 開始と同時にノエルが駆け出す。


 シルフィが風を巻き起こし、一気に加速する。ルナも闇を広げ、アルトの視界を僅かに乱した。


 その連携は二年生武闘大会の頃よりさらに洗練されている。


「いい連携だ」


 アルトは冷静だった。


 風を切るような剣閃で、ノエルの短剣を正確に受け流す。


 シルフィの風を読んでいるかのような立ち回り。


 まるで全てを見透かしているようだった。


 一方その頃、観客席ではレオンたちが試合を見守っていた。


「ノエル、速ぇな」


 ガイウスが感心したように呟く。


「以前よりさらに動きが洗練されている」


 テオドールも静かに分析する。


 ルシアンも頷こうとした、その時だった。


「……?」


 僅かに表情が変わる。


 遠く。


 アーカディアの外に異質な魔力。


 しかも一つや二つではない。数が多すぎる。


(これは……)


 ルシアンはゆっくり立ち上がった。


 その視線の先には、同じく異変を察知したヒューギルがいた。


 二人の視線が交差する。


 ヒューギルは小さく頷いた。


「すみません。少し席を外します」


 ガイウスが首を傾げる。


「どうしたんだ?」


「少し気になることがありまして」


 それだけ言い残し、ルシアンは足早に観客席を後にした。


 ヒューギルもまた静かに立ち上がり、周囲に気付かれぬようその場を離れる。


 向かった先は闘技場の裏手にある控えの部屋。


 扉を閉めると、ヒューギルが口を開いた。


「来たか」


 まるで来ることを分かっていたかのようだった。


「ヒューギル様もお気付きでしたか」


「ああ」


 肩には一羽の黒いカラス。


 その瞳が見ている景色が、ヒューギルにも共有されている。


「都市の外に大量の魔物が確認された。数だけではない、SSランク以上の個体が複数。さらに――」


 ヒューギルの表情が険しくなる。


「SSSランク、魔眼獣バロールも確認している」


 ルシアンは静かに目を細めた。


「なるほど、少々厄介ですね。他の守護者は?」


「現在各地の警戒へ回っている。こちらも人手が足りん」


 短い沈黙。


 ルシアンが口を開く。


「私が迎撃へ向かいます」


「頼めるか」


「もちろんです。都市へ近付ける前に片付けてきます」


 そう言い残すと、ルシアンは影へと沈んだ。


 一瞬で姿が消える。


 ヒューギルは静かに息を吐いた。


「頼んだぞ、ルシアン」


 そして再び観客席へ戻るため、ゆっくりと歩き出した。


 一方その頃、闘技場では試合が続いていた。


 ノエルはシルフィとルナの力を借りながら何度も攻め込む。


 だがアルトは崩れない。


 剣を交えるたびに、その差が少しずつ広がっていく。


 そして、アルトの剣がノエルの短剣を弾き飛ばした。


 そのまま喉元へ剣先を突きつける。


「そこまで!」


 審判の声が響く。


「勝者、アルト・セイリオス!」


 惜しみない拍手が送られる。


 ノエルは悔しそうに唇を噛んだ。


 アルトは剣を納め、静かに頷く。


「強くなったな。だが、まだ届かん」


 ノエルも小さく頭を下げる。


「ありがとうございました」


 こうして、準々決勝第一試合はアルトの勝利で幕を閉じた。


 その頃、アーカディアの外では、この武闘大会を揺るがす戦いが始まろうとしていることを、まだ誰も知らない。


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