第325話
第325話
第五試合。
「四年生代表、セドリック・アークライト!」
「二年生代表、グランヴェル・レグナス!」
会場の歓声が一段と大きくなる。
二人とも実力はSSランク。優勝候補同士の激突だった。
「始め!」
開始と同時に両者が駆け、剣と剣が激しくぶつかり合う。
金属音が何度も競技場へ響いた。
セドリックは無駄のない堅実な剣を振るう。確実に急所を狙う一撃。
対するグランヴェルは真正面からそれを迎え撃つ。
互角。
観客席から見ても、そう思える戦いだった。
「さすが四年生だ」
「グランヴェル相手に押されていない」
しかし、十合、二十合。
打ち合いが続くにつれ、少しずつ流れが変わる。
押しているのはグランヴェルだった。
「ぐっ……!」
セドリックが一歩下がる。
剣を受けるたび、その腕へ重い衝撃が伝わる。
「どうした」
グランヴェルが笑う。
「その程度か」
さらに踏み込む。
炎を纏った斬撃。
セドリックも受け止めるが、身体が後方へ滑った。
勝負を決める。
そう判断したグランヴェルが静かに息を吐く。
「来い」
火の中位精霊が姿を現した。
「マカセロ」
黄金の炎が剣へと宿り、競技場の空気が一気に熱を帯びた。
「黄金の炎……!」
観客席がざわめく。
セドリックも表情を引き締める。
「これが……!」
次の瞬間、グランヴェルが地を蹴った。
先ほどまでとは比較にならない速度。
「速っ――」
反応した時には遅かった。
黄金の炎を纏った斬撃がセドリックを捉える。
吹き飛ばされた身体が競技場を大きく滑った。
セドリックは立ち上がろうとする。
だが、膝をついた。
「そこまで!」
審判の声が響く。
「勝者、グランヴェル・レグナス!」
歓声が湧き起こる。
グランヴェルは剣を収める。
「いい腕だった」
セドリックも苦笑しながら立ち上がった。
「完敗だ」
続いて第六試合。
「三年生代表、エドワード・フェーン!」
「一年生代表、ノクト!」
競技場へ現れたノクトを見て、観客席から小さな声が漏れる。
「あれ……誰だっけ」
「一年生代表らしい」
「そうだったか?」
不思議と印象に残らない。
顔立ちも、立ち姿も、戦う前から存在感が薄かった。
ノクトは静かに剣を構える。
対するエドワードは長槍を軽く回した。
「始め!」
槍が鋭く突き出される。
ノクトは剣で受け流し、反撃を加える。
また受け流される。
派手さはない。ただ堅実に剣を振るい、防ぎ、距離を取る。
目立つ技もない、強烈な一撃もない、淡々とした戦いだった。
一方、エドワードは槍の間合いを巧みに活かし、徐々にノクトを追い詰めていく。
突き、薙ぎ払い、石突による牽制。
長い間合いを活かした連撃に、ノクトは防戦一方となる。
そして、槍の一撃が剣を弾き飛ばした。
そのまま穂先がノクトの喉元で止まる。
「そこまで!」
「勝者、エドワード・フェーン!」
静かな拍手が送られる。
エドワードは槍を肩へ担ぐ。
「いい剣筋だった」
ノクトは何も言わず剣を拾い上げると、小さく一礼して競技場を後にした。
その姿は、人混みへ紛れるように自然と消えていく。
誰の記憶にも、強く残ることなく。




