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果てなき世界  作者: 影川明空人
第7章 学園2年目 武闘大会編
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第323話

第323話


 武闘大会本戦当日。


 アーカディアは朝から大きな賑わいを見せていた。


「すごい人だな」


 レオンが観客席を見渡す。


 学園の生徒だけではない。


 各国の貴族、騎士団、冒険者、商人。


 世界各地から、多くの者が学園最高峰の戦いを見届けるため集まっていた。


 その熱気は、二年生武闘大会とは比べものにならない。


 実況役の教員が高らかに宣言する。


「これより、アーカディア武闘大会本戦を開始する!」


 会場が歓声に包まれた。


 まず行われたのは第一試合。


 アルト・セイリオス対ミレーユ・ローゼン。


 三年生代表のミレーユも健闘を見せた。


 氷と水の魔法でアルトの動きを封じようとする。


 だが。


「終わりだ」


 アルトはそれを真正面から突破。


 一瞬の踏み込み。


 一太刀で勝敗は決した。


「勝者、アルト・セイリオス!」


 四年生代表、昨年ベスト四。その実力を十分に見せつける試合だった。


 そして第二試合。


「一年生代表、シルヴェルト!」


「二年生代表、ノエル!」


 二人が競技場へ姿を現す。


 シルヴェルトはノエルを見るなり、険しい表情を浮かべた。


 前回の戦いで受けた屈辱を思い出す。


「……闇持ち」


 苛立ちを隠さず吐き捨てる。


「貴様だけは必ず叩き潰す」


 ノエルは静かに短剣を抜いた。


「そう、私は負けるつもりない」


 その肩ではルナが静かに目を細める。


 一方、シルフィは元気よくノエルの周囲を飛び回っていた。


「始め!」


 開始と同時。


「来い」


 シルヴェルトが指を鳴らす。


 風が渦を巻いた。


 その中心から、一体の精霊が姿を現す。


「マタ、ヨバレタ……」


 風の中位精霊。


 カタコトで言葉を紡ぐ存在。


 だが。


「黙って力を貸せ」


 シルヴェルトは精霊を見ることすらしない。


 命令だけを口にする。


 風の中位精霊は小さく息を吐いた。


「……ワカッタ」


 その声に喜びはない。契約者へ従っているだけだった。


 一方。


「シルフィ」


 ノエルが呼びかけると、シルフィはくるりと一回転し、元気よくノエルの前に飛んできた。


「ルナ」


 ルナは静かにノエルの肩に寄り添い、小さく頷くように身体を揺らす。


 ノエルは二体へ微笑みかけた。


「今日もよろしく」


 シルフィは嬉しそうにくるくると回り、ルナはそっとノエルの頬に触れるように寄り添った。


 その様子を見たシルヴェルトが鼻で笑う。


「精霊と馴れ合うとは、やはり闇持ちは愚かだ」


 ノエルは何も言わない。


 ただ構える。


 シルフィが勢いよく風を巻き起こした。


 ノエルの姿が消える。


「速い!」


 観客席がどよめく。


 シルヴェルトも風を纏い迎え撃つ。


 前回とは違う。


 中位精霊の加護を受けたその速度は、以前よりも遥かに上だった。


 剣と短剣が何度も交錯する。


「風よ」


 シルヴェルトが魔法を放つ。


 ノエルは風を利用して軌道を変える。


 シルフィが先回りするように風を送り、ルナが闇を広げて視界を遮る。


 二体の精霊が完璧に噛み合っていた。


「ちっ!」


 シルヴェルトが舌打ちする。


「もっと風を寄越せ!」


 命令だけが飛ぶ。


 風の中位精霊は黙って従う。


 だが、そこに意思は感じられなかった。


 シルフィがノエルの周囲を素早く旋回する。


 ルナが影のように寄り添い、タイミングを合わせる。


 言葉にしなくても分かる。


 何度も一緒に戦ってきたからこその連携。


「何故だ!」


 シルヴェルトが叫ぶ。


 中位精霊がいる自分の方が有利なはずだった。


 なのに徐々に押され始めている。


「もっと動け!」


 風の中位精霊は悲しそうに目を伏せた。


「……」


 ノエルはその姿を見て、小さく息を吐く。


 シルフィが一瞬だけノエルの前で止まり、勢いよく前方へ飛び出す。同時にルナが闇を広げる。


 風が爆発し、ノエルの姿が掻き消えた。


「どこだ!」


 背後。


「っ!」


 短剣が振るわれる。


 シルヴェルトが受ける。


 その瞬間、ルナの闇が視界を覆う。


「しまっ――」


 闇が晴れた時には、ノエルの短剣がシルヴェルトの喉元へ突きつけられていた。


 そして、腹部へ強烈な蹴りが叩き込まれる。


「がっ……!」


 身体が宙へ浮く。


 ノエルは追撃する。


 風を纏った一閃を受け、シルヴェルトはそのまま競技場へ叩きつけられた。


 激しい衝撃。


 静寂。


「そこまで!」


 審判の声が響く。


「勝者、ノエル!」


 歓声が上がる。


 シルヴェルトは返事をしない。


 完全に気を失っていた。


 ノエルは短剣を収める。


「ありがとう」


 シルフィは嬉しそうにくるくると回りながらノエルの周囲を飛び回る。


 ルナはそっとノエルの肩に寄り添い、静かに身体を預けた。


 その様子を見つめる風の中位精霊。


「……アアイウ、ケイヤク……ワルクナイ」


 誰にも聞こえないほど小さく呟くと、その姿は風と共に消えていった。


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