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果てなき世界  作者: 影川明空人
第7章 学園2年目 武闘大会編
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第321話

第321話


 決勝戦。


 グランヴェルとレオンは距離を置き、互いを見据える。


 競技場を包む空気が張り詰める。


「ここからが本番だ」


 グランヴェルが静かに笑う。


「ああ」


 レオンも剣を握り直した。


「もう手加減はしない」


 その言葉と同時に、レオンの身体から眩い光が溢れ出す。


 勇者の力。


 さらに、ルーチェがその隣で光を強めた。


「レオン!」


「ああ、行こう!」


 光が剣へと集まる。


 一方、火の中位精霊も嬉しそうに笑う。


「グランヴェル!」


「力を貸せ」


「ウン!」


 黄金の炎が剣を包み込む。先ほどまでとは比較にならない熱量。競技場全体の温度が一気に上昇した。


「来るぞ……!」


 観客席から緊張した声が漏れる。


 二人が同時に地面を蹴った。


 剣と剣が激突する。


 轟音。


 一撃ごとに地面へ亀裂が走る。昨年とは比べ物にならない速度を目で追える者はほとんどいなかった。


 レオンが剣を振るい、グランヴェルが受け流す。返す刀で黄金の炎を纏った斬撃。


 レオンは未来視で紙一重に躱した。


 しかし次の瞬間。


「【フレイムランス】」


 詠唱と同時に黄金の炎の槍が放たれる。


「っ!」


 レオンは剣で弾く。


 その隙にグランヴェルが懐へ入り込んでいた。


 重い一撃。


 受け止めるが、腕が痺れる。


「まだだ!」


 さらに炎弾、炎刃。剣戟の合間を縫うように魔法が飛ぶ。


「くっ……!」


 レオンは光魔法で迎撃しながら剣を振るう。


 ルーチェも光弾を放ち援護する。


 それでも押されている。


「やっぱり……!」


 レオンが歯を食いしばる。


「総合力では……!」


 剣、魔法、火力、経験。どれを取っても、まだグランヴェルが一枚上だった。


 観客席でもそれは明らかだった。


「レオンが押され始めた」


 ガイウスが呟く。


「このままじゃ……」


 フィアナは黙って試合を見つめていた。


 レオンも理解している。


 このままでは勝てない。


(だったら……!)


 ルシアンとの特訓。


 そして何度も見せられた戦い。


 一人の姿が頭に浮かぶ。


 アルト・セイリオス。


「なら……!」


 レオンの左手へ光が集まる。


 形を変え、一本の光の剣となった。


「何だと?」


 グランヴェルの目が見開かれる。


「二刀流……!」


 観客席もどよめく。


「まさか」


 テオドールが息を呑む。


「アルト先輩の……!」


「見様見真似か」


 レティシアが静かに呟く。


 レオンは左手の光剣を握る。


「うおおおおっ!」


 一気に踏み込む。


 左右から斬撃が襲う。


「ちっ!」


 グランヴェルが受ける。


 だが一瞬、対応が遅れた。


 光の剣が肩を掠める。


 鮮血。


「……!」


 グランヴェルが初めて表情を変えた。


「まだ!」


 レオンは攻撃を止めない。


 右手の剣、左手の光剣、ルーチェの援護。


 三方向から攻め立てる。


 グランヴェルも炎を纏って応戦する。


 黄金の炎と光が激しくぶつかり合う。


 何十合、何百合。互いに傷を増やしていく。


 やがて二人とも大きく距離を取った。


 肩で息をしている。汗が地面へ落ちた。


 火の中位精霊も、ルーチェも疲れたように息をついている。


「……はぁ」


 レオンが剣を構える。


 光の剣は消えていた。もう維持する余力はない。


 グランヴェルも剣を握り直す。黄金の炎も弱まり始めていた。


「最後だ」


「ああ」


 互いに頷く。


 これで決める。


 火の中位精霊が剣へ力を流し込む。黄金の炎が再び燃え上がった。


 グランヴェルが静かに口を開く。


「猛き炎よ、我が威を示せ――」


 黄金の炎が一気に剣へ収束する。凄まじい熱量。


 競技場の空気が震えた。


 レオンも全てを込める。


 勇者の力、ルーチェの光、水と光の魔力。残された全てを剣へ注ぎ込む。


 二人が駆ける。


「「うおおおおおおっ!!」」


「《金焔覇断》!!」


「《ブレイブ・スラッシュ》!!」


 そして激突した。


 眩い光と黄金の炎。


 爆発的な衝撃が競技場全体を揺らした。


 猛烈な衝撃波。


 観客席まで風が吹き抜ける。


 土煙が舞い上がった。


「見えない……!」


 誰もが息を呑む。


 やがてゆっくりと煙が晴れていく。


 そこには、二人とも倒れていた。


「まさか……」


「引き分けか?」


 競技場が静まり返る。


 その時だった。


「……まだだ」


 グランヴェルの腕が動く。


 剣を支えに、ゆっくりと、本当にゆっくりと立ち上がった。


 レオンは動かない。


「そこまで!」


 審判が大きく宣言する。


「勝者――グランヴェル・レグナス!」


 一瞬の静寂。


 そして競技場を揺るがすほどの歓声が響いた。


 グランヴェルは苦笑した。


「危なかったな」


 昨年の決勝、あの時はまだ余力があった。


 だが今年は違う、本当に紙一重。


 一歩間違えれば、自分が倒れていた。


 医療班がレオンの元へ向かう。


 その途中、レオンがゆっくりと目を開けた。


「……負けたか」


 悔しそうに笑う。


 グランヴェルがレオンの前まで歩いてきた。


「レオン」


「ああ」


「貴様は強くなった」


 グランヴェルは真っ直ぐレオンを見る。


「もはや誰も貴様を未熟な勇者とは言うまい。俺も認めよう。貴様は、俺の倒すべき好敵手だ」


 レオンは少し驚いたように笑う。


「ありがとう。でも」


 ゆっくりと拳を握る。


「次は俺が勝つ」


 グランヴェルも笑う。


「ああ、待っている」


 二年生武闘大会、優勝。


 グランヴェル・レグナス。


 だが、誰もが理解していた。勇者レオンは、昨年とは比べものにならないほど、強くなっていることを。


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