第313話
第313話
二年生の武闘大会が始まった。
昨年と同じく、SクラスからCクラスまでの代表者によるトーナメント形式。
大会は三日間にわたって行われる。
初日は一回戦から三回戦。
二日目は準々決勝と準決勝。
そして三日目に決勝戦が行われる予定となっていた。
この大会で上位四名に入った者だけが、二年生の代表として学園全体の武闘大会へ出場することができる。
昨年、レオンは決勝まで勝ち進み、グランヴェルに敗れた。
そして今年、再び二年生の頂点を目指す戦いが始まった。
◇ ◇ ◇
「そこまで!」
審判の声が響く。
レオンの剣先が、対戦相手の喉元で止まっていた。
「勝者、レオン!」
歓声が上がる。
レオンは剣を下ろし、対戦相手へ手を差し出した。
「ありがとうございました」
「……完敗だ」
相手は苦笑しながら、その手を取った。
これで三回戦突破。
初日の試合を全て勝ち抜き、ベスト8進出が決まった。
「お疲れさまでした」
競技場から戻ってきたレオンを、フィアナが迎える。
「ありがとう」
「危なげなかったですね」
ガイウスが笑いながらレオンの背中を叩く。
「本当に強くなったよな」
「そうか?」
「そうだろ。今日なんて全然苦戦してないじゃん」
テオドールも頷く。
「以前より無駄な動きが減った。相手の攻撃を見てから動くのではなく、先を読んでいるようにも見えたな」
「この一ヶ月、ほとんど毎日ルシアンと戦ってたからな」
レオンは苦笑する。
「カイン先輩やアルト先輩とも戦わされたし」
「随分と贅沢な訓練環境だな」
「やってる本人は毎日大変だったんだけどな」
そう言いながらも、レオンは自分の手を見る。
強くなった。自分でも、それは感じている。
以前よりも相手の動きがよく見える。
剣を振るう時の迷いも減った。
ルーチェとの連携も良くなっている。
だが。
「……まだまだだ」
小さく呟く。
「何か言いましたか?」
「いや、何でもない」
ヒューギルに言われた言葉を思い出す。
SSSランクへ至れ。
今の自分は、まだその場所からは遠い。
この大会で優勝することすら、通過点でしかない。
(ルシアンにも言ったからな)
いなくても優勝してみせる。
そう宣言した。
だからこそ、負けるつもりはなかった。
◇ ◇ ◇
その後も試合は進み、初日の全日程が終了した。
そして競技場の中央に、ベスト8進出者の名前が発表される。
グランヴェル、レオン、レティシア、テオドール、シャロン、ディオン、ガイウス、ノエル。
八名の名前が並んだ。
「リオルド、負けたんだな」
ガイウスが少し残念そうに言う。
「ああ」
テオドールが頷く。
「相手はAクラス一位のディオンだった。かなりいい勝負だったが、最後は僅かな差で負けたな」
Sクラスから出場した八名のうち、七名がベスト8へ進出。
唯一その中へ割って入ったのが、Aクラス一位のディオンだった。
リオルドとの試合は接戦だった。
互いに最後まで譲らず、どちらが勝ってもおかしくない戦い。
最後はディオンが僅かな隙を突き、勝利を収めた。
「Aクラスにも強い人はいますからね」
フィアナが言う。
「ディオンさんは昨年から注目されていた方です」
「次はレティシアと当たるみたいだな」
レオンの言葉に、全員の視線が次の表示へ向く。
明日の準々決勝、その組み合わせが発表された。
第一試合、グランヴェル対テオドール。
第二試合、レティシア対ディオン。
第三試合、ノエル対シャロン。
そして第四試合、レオン対ガイウス。
「……俺とレオンか」
ガイウスが頭を掻く。
「そうみたいだな」
「手加減してくれたりは?」
「しない」
「即答かよ」
レオンが笑う。
「ガイウスだって、本気で来るだろ?」
「そりゃもちろん」
ガイウスも笑い返す。
「せっかくここまで来たんだ。俺だって代表になりたいからな」
「ああ、俺も負けない」
互いに拳を軽く合わせる。
そして、少し離れた場所では、グランヴェルが発表された組み合わせを静かに見つめていた。
「テオドールか」
その黄金の瞳が細められる。
一方のテオドールも、対戦表を見ながら小さく息を吐いた。
「優勝候補筆頭か」
「運が悪いね」
ノエルが言う。
「そうだな」
テオドールは眼鏡の位置を直す。
「だが」
その視線がグランヴェルへ向く。
「勝負をする前から負けるつもりはない」
明日、二年生の代表四名が決まる。
そして、その先には準決勝。
昨年以上に成長した二年生たちの戦いは、ここからさらに激しさを増していく。




