第311話
第311話
それから約一ヶ月。
レオンの日常は、大きく変わっていた。
授業が終われば、そのまま専用訓練場へ向かう。
そして放課後は、ほぼ毎日のようにルシアンによる特訓が行われた。
「まだ甘いです」
剣を受け流される。
「そこ!」
「ぐっ!」
ルシアンの木剣がレオンの肩を叩く。
「相手の視線だけを見てはいけません。肩、腰、足、全身から次の動きを読み取ってください」
「おう!」
レオンは何度倒されても立ち上がった。
ヒューギルから言われた言葉。
――SSSランクへ至れ。
その言葉を胸に刻み、ひたすら剣を振り続けた。
もちろん訓練はそれだけではない。
ルーチェとの連携、魔法、勇者の力、アストレイアの加護。
全てを磨き上げる日々だった。
◇ ◇ ◇
しかし、静かな修行ばかりが続いたわけではない。
「ルシアン!」
ある日の放課後、聞き慣れた大声が響く。
カインだった。
「勝負だ!」
隣にはアルト、さらにグランヴェルまでいる。
ルシアンは額へ手を当てた。
「また来たんですか」
「当たり前だ!」
カインは満面の笑みを浮かべる。
「約束しただろ!逃げるなよ!」
ルシアンは少し考える。
「……では交換条件です」
「お?」
「私と戦いたければ、先にレオンの相手をしてください」
「なるほど!」
カインは豪快に笑った。
「面白ぇ!よし、勇者!来い!」
こうして、ルシアンと戦うために、カインがレオンの相手をする日もあった。
別の日にはアルトがレオンと剣を交えた。
「もっと冷静に相手を見ろ。焦って一撃で決めようとするな」
アルトの助言は簡潔だが的確だった。
そしてレオンの訓練が終われば。
「お待たせしました」
「待ちくたびれたぜ!」
カインが嬉しそうに笑う。
そこから始まるのは、ルシアンとカインの模擬戦。
レオンはそれを一言も発さず見つめていた。
技術、駆け引き、間合い。どちらも異次元だった。
「……すごい」
毎回そう思う。
少しでも盗めるものは盗もうと、食い入るように見続けた。
そんな日々が続き、一ヶ月はあっという間に過ぎていった。
◇ ◇ ◇
そして、いよいよ二年生武闘大会が目前まで迫る。
昨年と同じ形式。
SクラスからCクラスまで、それぞれの代表者によるトーナメント。
その中で勝ち残った上位四名のみが、学園全体の武闘大会へ出場できる。
今年、Sクラスから選ばれたのは八名。
グランヴェル、レオン、レティシア、テオドール、シャロン、リオルド、ガイウス、ノエル。
一方、フィアナは昨年同様、回復担当として大会には参加しない。
そして今年、新たな顔ぶれとなったのがシャロンだった。
昨年はレティシアの護衛を優先し、大会への出場を辞退していた。
しかし。
『あなたも今年は出てみれば?』
レティシアのその一言が背中を押した。
シャロン自身も、一年間でどこまで成長できたのか試したいという思いがあった。
こうして、八人の代表が決まった。
昨年以上に実力者が揃った二年生。
その中で、学園武闘大会への切符を掴む四人は、一体誰になるのだろうか。




