第297話
第297話
三日目。
ギデオンたちの警告もあり、一行は昨日まで以上に周囲を警戒しながら探索を進めていた。
それでも探索自体は順調だった。指定された素材を採取し、魔物を討伐し、希少な鉱石も回収していく。魔物との戦闘も危なげない。
レオンとルーチェ、ノエルとシルフィ、ルナ。精霊との連携も日に日に息が合ってきていた。
「いい感じですね」
フィアナが微笑む。
「ルーチェも大分動きが分かってきた」
レオンが笑う。
「シルフィも前より言うこと聞くようになったし」
「誰が言うこと聞かないって?」
ノエルが呆れたように返す。
そんな穏やかな空気は、突然破られた。
ガサッ。ガサガサガサッ!!
四方八方から物音が響く。
ノエルの表情が一変した。
「囲まれてる!」
次の瞬間、森の中から次々と魔物が姿を現した。
一体、二体、十体、二十体。
さらにその奥からも続々と現れる。
「こんな数……!」
ガイウスが盾を構える。
現れた魔物の大半はAランク。
しかし、その中には明らかに格上の気配も混じっていた。
「Sランク……!」
アルトが低く呟く。
「いや、あれは……」
ギデオンが目を細める。
「SSには届かんが、それに迫る個体もいる」
異常だった。
これほどの魔物が一ヶ所へ集まるなど聞いたことがない。
「一体どこから……!」
ライルが剣を抜く。
「考えてる暇はない!」
「迎え撃つ!」
戦闘が始まった。
ギデオンも、アルトも、ライルも、異常事態とみて、護衛としてではなく、一人の戦力として剣を振るう。
レオンたちもそれぞれ魔物を迎え撃った。
光が閃き、風が舞い、岩が砕ける。
数は多いが、一体一体なら決して敵ではなかった。
「押してる!」
ガイウスが叫ぶ。
徐々に魔物の数は減っていく。
勝てる。
誰もがそう思い始めた、その時だった。
空間が歪んだ。何もなかった空間に、黒い裂け目が走る。
そこから、一人の魔族がゆっくりと姿を現した。
「……魔族」
ルシアンが静かに呟く。
魔族は一行を一瞥すると、口元を歪めた。
「ふむ、なかなか優秀だな」
その瞬間、魔族の周囲に幾重もの魔法陣が展開される。
「空間魔法……!」
テオドールが叫ぶ。
魔法陣から新たな魔物が次々と現れる。
「まだいるのか!」
レオンが歯を食いしばる。
しかし、それだけでは終わらなかった。
魔族は静かに右手を掲げる。
「では、始めよう」
巨大な魔法陣が山全体を覆った。空間そのものが悲鳴を上げ、地面が軋む。
「まずい!」
ギデオンが叫ぶ。
次の瞬間、轟音と共に地面が崩れた。
大規模な崩落。足場が一気に消えていく。
「ガイウス!」
レオンは咄嗟にガイウスの身体を掴み、崩落から遠ざけるように投げ飛ばした。
「レオン!」
一方、ルシアンは落ちかけていたノエルの腕を掴む。
「行ってください!」
そのまま力強く投げ上げる。
「ルシアン!」
ノエルの叫びが響く。
フィアナとテオドールはアルトとライルによって助け出される。
だが、レオンとルシアンだけが崩れ落ちる大地へ取り残された。
ギデオンは一瞬動きを止めた。
二人、どちらを追う。
その迷いを見抜いたように、ルシアンが叫ぶ。
「レオンを!」
その一言でギデオンは決断する。
レオンへ向かって飛び出した。
しかし、魔族がその前へ立ちはだかる。
「通さん」
放たれた一撃をギデオンは剣で受け止める。
轟音が響き、衝撃で足が止まった。
「貴様……!」
崩落は止まらない。
レオンとルシアンの姿は、深い谷底へと飲み込まれていった。




