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果てなき世界  作者: 影川明空人
第6章 学園2年目
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第292話

第292話


 遠征学習まであと三日。


 一年生は一足早く昨日、二年生とは別の場所での遠征学習へ出発していた。


 出発前には、セシルがわざわざフィアナと勇者パーティのもとを訪れ、


「皆様もお気をつけください」


 と、丁寧に挨拶をしていった。


 そして翌朝、ルシアンがSクラスの教室へ入ると、いつもの勇者パーティの面々は既に集まっていた。


 だが、少し様子が違う。


(……なるほど。)


 近付いたルシアンは、その理由に気付いた。


 ノエルの周囲を二体の精霊が飛んでいた。


 一体は風の下位精霊。


 元気いっぱいな少女で、ノエルの周りをくるくる飛び回りながら、時折髪を引っ張って遊んでいる。


「こら、引っ張るなって」


 ノエルは困ったように笑う。


 もう一体は闇の下位精霊。


 こちらは対照的に静かで、ノエルの肩へちょこんと腰掛け、じっと周囲を見渡していた。


 まるでノエルを守るように、小さな身体で警戒している。


 その姿は一般の生徒には見えていない。


 だが、精霊を視認できる者にははっきりと見えていた。


 ルシアン、グランヴェル、レオン、そしてフィアナ。


 レオンは興味深そうに風の精霊を眺めている。


「ノエル、その二人はどうしたんですか?」


 ルシアンが尋ねる。


「今朝起きたら、いた」


「そうだったのか」


 レオンが感心したように頷く。


「なになに?」


 ガイウスが会話へ割り込む。


「何の話?」


 その時、教室の扉が開いた。


 レオニードだった。


「席につけ」


 授業開始の声とともに、その話題は一旦途切れた。


◇ ◇ ◇


 昼休み、勇者パーティはいつものように集まって昼食を取っていた。


「それで?」


 ガイウスが改めて聞く。


「朝の話だけど、結局どういうことなんだ?」


 ノエルは肩に座る闇の精霊を指差した。


「今朝起きたら目の前にいて」


 次に風の精霊を見る。


「そのまま契約してくれた」


「へぇ!」


 ガイウスは嬉しそうに笑った。


「よかったじゃん!」


「これで戦力アップだな」


 テオドールも冷静に分析する。


「うん」


 ノエルも頷いた。


「少しは役に立てるかな」


 その間も精霊たちは自由だった。


 レオンの光の下位精霊がふわふわと近寄る。


 すると風の精霊は嬉しそうに駆け寄り、くるくると一緒に飛び始めた。


 とても仲が良さそうだ。


 今度は風の精霊が闇の精霊の手を引っ張る。


 『こっちこっち!』と言わんばかりに誘う。


 だが、闇の精霊はぷいっと顔を逸らした。


 全く動こうとしない。


 風の精霊は首を傾けて「なんで?」というような仕草をする。


 光の精霊は困ったように肩をすくめる。


 そんな微笑ましい光景を見ながら、レオンがぽつりと呟いた。


「いつまでも『精霊』って呼ぶのも、なんかあれだよな」


「じゃあ名前つけてやったらどうだ?」


 ガイウスが提案する。


 フィアナも微笑んだ。


「いい考えですね」


 ノエルは少し考えてから口を開く。


「エルフの間じゃ、精霊は精霊として扱うから、名前をつけようって人はあまりいない」


「ただ、最上位精霊だったりすると、自分の名前を持っている子もいる」


「なるほど」


 レオンは光の精霊を見つめる。


「じゃあ、別に名前を付けてもいいんだよな」


 光の精霊は嬉しそうに身体を揺らした。


 ノエルも風の精霊と闇の精霊を見つめる。


「せっかくだし、二人にも付けるか」


 それぞれしばらく考えた末に、三体の精霊へ新しい名前が贈られた。


 名前を呼ばれた精霊たちは、それぞれ嬉しそうに反応する。


 レオンは小さく笑い、光の精霊へ手を差し出した。


「これからもよろしくな」


 光の精霊はその指へ嬉しそうに抱きついた。


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