第288話
第288話
それから五日後。
ようやく修行へ出ていた三人がアーカディアへ戻ってきた。
グランヴェル、ヴァルク、ディアナ。
久しぶりに姿を現した三人に、教室内が少しだけ賑わう。
「お、帰ってきた!」
ガイウスが真っ先に声を上げた。
「思ったより遅かったな」
レオンも笑いながら近付く。
グランヴェルは軽く顎を上げる。
「多少、手間取っただけのことだ」
「修行はどうだった?」
レオンが尋ねる。
「悪くはない」
短く、しかしどこか余裕を含んだ声音だった。
だが、その一言だけでも以前とは違う何かを感じさせた。
ガイウスも目を丸くする。
「なんか……雰囲気変わった?」
「確かに」
レオンも頷く。
以前よりも落ち着いている。それだけではない、纏う空気そのものが違う。
鋭く、それでいて揺るがない。
ヴァルクもディアナも以前より成長していることは見て分かる。
だが、グランヴェルだけは別格だった。
この短期間で一段階。いや、それ以上。確実に壁を越えている。
(SS下位くらいですかね)
ルシアンは静かに分析する。
予想以上だった。
ドラクスとの邂逅で折れかけた心。それを乗り越えた結果なのだろう。
その時、グランヴェルがルシアンの前まで歩いてきた。
「遅かったですね」
ルシアンが言う。
「力の制御に少々手間を取られてな」
グランヴェルはわずかに口元を緩める。
「日中は雑事も多い。思うように時間を割けぬのは、まあ仕方あるまい」
どこか達観したようでいて、しかしそれを当然と受け入れている声音だった。
ルシアンは納得したように頷いた。
「それでも、十分成果は出たようですね」
「当然だ」
グランヴェルは自信ありげに笑う。
「無為に時を費やす趣味はないのでな。放課後、その成果を貴様に見せてやろう」
「わかりました」
ルシアンも小さく笑う。
「楽しみにしています」
その会話を聞いていたレオンが手を挙げた。
「なあ、俺も見ていいか?」
ルシアンはグランヴェルへ視線を向ける。
「私は構いませんが」
グランヴェルも頷いた。
「構わん。見る目があるならば、多少は得るものもあろう」
「よし!」
レオンが笑う。
「絶対見に行く」
「俺も!」
ガイウスも即答した。
「興味ある」
テオドールも珍しく参加を表明する。
「私も見たいです」
フィアナが微笑む。
「まあ、みんなが行くなら」
ノエルが肩を竦めた。
結局、いつもの勇者パーティ全員が見学することになった。
◇ ◇ ◇
放課後の訓練場、ルシアンとグランヴェル。
その周囲にはレオンたちが立っていた。他に人影はない。
「始まるか」
レオンが腕を組む。
以前も見た二人の手合わせ。だが今回は違う。
修行を終えたグランヴェルがどれほど強くなったのか。
全員が興味を抱いていた。
グランヴェルはゆっくりと剣を抜く。
以前よりも無駄のない動き。
静かに構えたその姿だけで、以前とは別人のような迫力があった。
ルシアンも剣を抜く。自然体、いつも通りの構え。
二人の間に静寂が流れる。
そして、グランヴェルが静かに口を開いた。
「それでは――ゆくぞ」




