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果てなき世界  作者: 影川明空人
第6章 学園2年目
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第286話

第286話 


 シルヴェルトとエルミナが立ち去ると、訓練場には再び静けさが戻った。


 ノエルはフィアナの回復魔法を受けながら立ち上がる。


「ありがと」


「無理はしないでくださいね」


「大丈夫」


 ノエルは笑って親指を立てた。


 その様子を確認したルシアンが前へ出る。


「それでは次ですね」


 視線が移る。


 向かい合うのはセシルと双子。


 リリアは扇子でも持っていそうな優雅な仕草で微笑み、リリスは面白そうに口角を上げている。


「始める前に一つ」


 リリスが手を挙げた。


「最初は私一人でやっていい?」


「リリス?」


 リリアが妹を見る。


「どれくらい強いか見てみたいんだよね」


 リリアは少し考えた後、肩を竦めた。


「構いませんわ。ですが、無茶はしないことです」


「はーい」


 軽い返事だった。


 セシルは静かに二人を見た。


「それでよろしいのですか?」


「もちろん!」


 リリスは双短剣を抜く。


「二対一じゃつまらないし!」


「では」


 セシルも剣を抜き、大盾を構えた。まさに聖騎士。無駄のない美しい構えだった。


「始め!」


 ルシアンの合図。


 次の瞬間、リリスが消えた。


「速っ!」


 ガイウスが思わず声を上げる。


 一瞬でセシルの懐へ潜り込む。双短剣が閃く。


 しかし。


 ガギィン!!


 金属音が響く。


「え?」


 防がれた。


 大盾が最短距離で割り込み、短剣を受け止めている。


 リリスはすぐさま横へ回り込む。


 二撃、三撃、四撃。


 あらゆる角度から斬り込む。


 だが全て防がれる。


「硬っ!」


 思わず声が漏れた。


 セシルの盾は微動だにしない。


 ただ受けるだけではない。受け流し、角度を変え、最小限の動きで攻撃を殺している。


「技術だな」


 テオドールが静かに呟く。


「無駄が全くない」


 レオンも真剣な目で見ていた。


 リリスは攻撃の手を止めない。だが突破口が見えない。


 その時だった。


 セシルの剣が動く。


 盾で弾いた勢いを利用し、そのまま鋭い斬撃へ繋げる。


「っ!」


 リリスが大きく飛び退く。あと一歩遅ければ斬られていた。


「危なっ!」


 距離を取ったリリスが笑う。


「一人じゃ無理か」


 その言葉にリリアが前へ出る。


「最初からそう言いましたのに」


 双短剣を構える。


「ここからは二人ですわ」


 セシルは静かに頷いた。


「承知しました」


 二人が同時に消える。


「来た!」


 ガイウスが叫ぶ。


 左右に同時。さらに速度も先程より速い。


 息がぴったり合っていた。


 セシルが盾を動かし、左を防ぎ、右は剣で受ける。


 今度は背後、振り返る前に上段。


 休む間もない。攻撃が途切れない。


「すごい連携……」


 フィアナが思わず呟く。


「これが二人の本来の戦い方か」


 レオンも目を細める。


 セシルは冷静だった。


 地属性魔法で足場を僅かに隆起させ、双子の動きを乱す。


 さらに光魔法で視界を遮る。


 だが。


「甘いですわ!」


 リリアが即座に対応する。


「そこ!」


 リリスが死角へ回り込む。


 防ぐ。


 また反対側。防ぐ、防ぐ、防ぐ。完全に防戦一方だった。


 リリス一人なら圧倒していた。


 しかし二人同時となると話は違う。


 攻撃の隙がない。盾で防ぎ、剣で受け流し、体勢を崩さないことが精一杯。


「攻められないか」


 レオンが静かに呟く。


 セシル最大の強みは守り。そして課題もそこにある。守りから攻撃へ移る一瞬、そこを双子は決して許さない。


 少しでも剣を振ろうとすれば、その隙へ二人同時に斬り込んでくる。


 だから攻撃へ転じられない。


「流石ですわ」


 リリアが笑う。


「ですが、守るだけでは勝てませんわよ!」


 さらに攻撃が激しさを増す。


 セシルは一歩も引かない。


 しかし、流れは完全に双子のものになり始めていた。


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