第284話
第284話
廊下の空気は妙に張り詰めていた。
シルヴェルトとリリア、リリス。
お互いに睨み合っている。
エルミナは相変わらず静観、セシルは呆れたような顔。
そして。
「帰ろうか」
レオンが言った。
「賛成」
ノエルが即答する。
「面倒だ」
テオドールも頷いた。
勇者パーティ全員の意見が一致した。関わらないのが一番である。
そして何事もなかったかのようにその場を離れようとする。
だが。
「ちょっと待ちなさい!」
リリアの声が響いた。
レオンたちが振り返る。
「何かな?」
レオンが首を傾げた。
「何かな?じゃありません!」
リリアは明らかに苛立っていた。
「どこへ行こうとしているのですか!」
「もう夕方だし」
レオンは窓の外を見る。
「帰ろうかなーって」
「帰る?」
リリアの眉がぴくりと動く。
「私たちが話しかけていたのを忘れたのですか!?」
「いや」
レオンは困ったように頭を掻く。
「覚えてるけど」
「それで?」
「それで?」
リリアの額に青筋が浮かぶ。
「勇者ならもう少し反応があるものではありませんの!?」
「そうかな?」
「そうですわ!」
リリスも便乗した。
「逃げるの?怖い?まさか勇者様が?」
明らかな挑発だった。
だが、レオンは特に怒らない。
むしろ少し面倒そうだった。
(何でこんな絡まれてるんだろうな……)
そんな顔をしている。
ガイウスも苦笑している。
テオドールは完全に呆れていた。
「あなたたち」
セシルが前に出た。
「いい加減にしてください」
リリアが振り向く。
「何ですの?」
「フィアナ様は帰ろうとされています」
セシルは真顔だった。
「その邪魔をしないでいただきたい」
リリアの眉が跳ねる。
「関係ありませんわ」
「あります」
即答だった。
「私にとっては最重要事項です」
セシルらしい回答にフィアナは思わず苦笑する。
リリスは呆れた顔をした。
「何その聖女様至上主義」
「当然です」
「当然なんだ……」
ガイウスが思わず呟く。
その時だった。
「ならこうしましょう」
今まで黙っていたルシアンが口を開いた。
全員の視線が集まる。
「お互い言いたいことがあるのでしょう?でしたら実力で決めればいい」
リリアが興味を示す。
「ふーん?具体的には?」
ルシアンは淡々と言う。
「シルヴェルトはノエルが気になる。ノエルもシルヴェルトに思うところがある。なら二人で決着をつければいい」
シルヴェルトが鼻で笑った。
「面白い」
「私は構わない」
ノエルは大きくため息を吐いた。
「面倒だけど、まあいいよ」
その言葉にシルヴェルトが笑う。
「後悔するなよ」
「それはこっちの台詞」
ノエルも負けていない。
「それで」
リリアが腕を組む。
「私たちは?」
「レオンが相手をすればいいでしょう」
ルシアンは言った。
「あなたたちは勇者を見定めに来た。ならばレオンが相手をするのがいいでしょう」
「ちょっと待ってください」
セシルが前に出てきた。
「その双子の相手は私がしましょう」
「いいのか?」
「前から双子の行動には目に余るところがありました。フィアナ様のお帰りの邪魔にもなっているので、私が懲らしめます」
リリスが笑う。
「へぇ、面白いじゃん」
リリアも口元を吊り上げた。
「首席とやれるなら悪くありませんわね」
話がまとまり始める。
レオンはその様子を見ながら小声で呟いた。
「何でこうなったんだ?」
「知らん」
テオドールが即答する。
「私は帰りたかっただけなんだけど」
ノエルも呆れていた。
「まあ」
レオンが苦笑する。
「とりあえず明日は面白くなりそうだな」
そうして翌日、ノエル対シルヴェルト。リリア&リリス対セシル。
二つの勝負が決まったのだった。




