第280話
第280話
セシルが加わり、そのまま勇者パーティとの雑談が続いていた。
フィアナの後輩ということもあり、最初こそ少し緊張していたセシルだったが、レオンたちの気さくな雰囲気のおかげで徐々に肩の力が抜けていく。
「そういえばさ」
ガイウスが思い出したように口を開く。
「今年の一年生ってどんな感じなんだ?強そうなやつとかいるのか?」
セシルは少し考えてから頷いた。
「何名かおります」
「へぇ」
ガイウスが興味深そうに身を乗り出す。
「ちなみに首席は誰なんだ?」
一瞬だけ沈黙。
そしてセシルは真面目な顔のまま答えた。
「私です」
ガイウスが固まった。
「お、おう」
思わず変な返事になる。
ノエルが吹き出した。
「自信満々だね」
「聞かれましたので」
セシルは首を傾げる。
「ただ事実を言っただけですよ」
「いや、間違ってはいないんだけどな」
レオンも苦笑する。
どうやら本人に自慢しているつもりは全くないらしい。
テオドールも小さく頷いた。
「少なくとも、その程度の実力はあるということだろう」
アーカディアの首席は伊達ではない。
それだけで十分な評価になる。
「他には?」
レオンが尋ねる。
「双子の姉妹がおります。リリア様とリリス様です」
その名前を聞いた瞬間。
「ああ」
テオドールが納得したように頷いた。
「やはりあいつらか」
「知ってるのか?」
レオンが聞く。
「会ったことがある」
テオドールは少し嫌そうな顔をした。
「小規模国家群の方にある国の貴族だ。実力は本物だぞ」
「そんなに強いのか?」
ガイウスが驚く。
「一人一人でも優秀だ。だが本領は二人揃った時だな。息が合いすぎている」
テオドールは少し昔を思い出すように目を細めた。
「正直、相手にしたくないタイプだ」
「へぇ」
ノエルが面白そうに笑う。
「テオドールがそこまで言うんだ」
「性格は?」
ガイウスが恐る恐る聞いた。
テオドールは即答した。
「面倒だ」
「やっぱりか」
レオンたちが苦笑する。
どうやら実力だけでなく性格の方も有名らしい。
「他には?」
今度はフィアナが尋ねた。
「エルフの方が二名おります」
その瞬間。
「エルフ?」
レオンが目を丸くする。
「二人も?」
ガイウスも驚いた。
そして自然と視線がノエルへ向く。
「なに?」
ノエルが眉をひそめた。
「いや」
ガイウスが頭を掻く。
「だってエルフって珍しいだろ。アーカディアにもノエルしかいなかったし」
「そうだね」
ノエルは軽く肩を竦めた。
「少なくとも私が入学してからは見たことないかな」
テオドールも頷く。
「俺も聞いたことがない。エルフが二人同時に入学とはな」
セシルは頷いた。
「名前はシルヴェルト様とエルミナ様です」
その名前を聞いた瞬間だった。
ノエルの表情がほんの僅かに固まる。
一瞬だけだった。すぐに元へ戻る。
だがルシアンは見逃さなかった。
「知り合いなのか?」
レオンが尋ねる。
「まあね」
ノエルは視線を少し逸らした。
「同郷だから」
「仲良いのか?」
ガイウスが悪気なく聞く。
ノエルは少しだけ笑った。
「どう思う?」
「……あー」
ガイウスが察したように口を閉じる。
どうやら複雑な事情があるらしい。
ルシアンは静かにそのやり取りを見ていた。
予想以上に関係は悪そうだ。
「強いのか?」
レオンが話を続ける。
「シルヴェルト様はAランク上位程度と言われています」
「エルミナ様は……」
セシルが少し考え込む。
「正直、よく分かりません」
「分からない?」
テオドールが眉を上げた。
「試験結果だけなら上位の成績でした。ですが、実際に彼女を見て感じた強さは、試験での評価とは違ったように感じました」
「面白そうだな」
レオンが笑った。
「今年も色々ありそうだ」
「その予感はするね」
ノエルも頷く。
首席のセシル、双子の姉妹、そしてエルフの二人。
まだ顔も見ていない新入生たちだが、今年もアーカディアは賑やかになりそうだった。




