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果てなき世界  作者: 影川明空人
第5章 学園1年目 激動編
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第277話

第277話 


 ヒューギルへの報告を終えた翌日。


 ルシアンは久しぶりに勇者パーティの面々と顔を合わせていた。


「お、帰ってきた」


 最初に気付いたのはガイウスだった。


「ルシアン!」


 レオンも手を振る。


 全員無事らしい。


 それだけで十分だった。


「どうでしたか」


 ルシアンが尋ねる。


 するとガイウスが笑う。


「結構楽しかったぞ!」


「お前が言うと遊んでたみたいに聞こえるな」


 テオドールが呆れたように言う。


「いや実際いい経験だった」


 今度はレオンが頷いた。


「依頼って色々あるんだな。魔物退治だけじゃなくて護衛とか探索とかもやったし」


「戦う相手も毎回違いますからね」


 フィアナも同意する。


「良い勉強になりました」


 ノエルも珍しく素直だった。


「森の探索依頼とかもあったし、まあまあ楽しかったかな」


 ルシアンは小さく頷く。


 表情こそ変わらないが、全員少し成長しているのが分かった。


 特にレオン、以前より動きが洗練されている。


 合同遠征、ダンジョン実習、そして冒険者活動。


 着実に経験を積んでいた。


「ルシアンは?」


 レオンが聞く。


「用事は終わったのか?」


「ええ」


 ルシアンは頷いた。


「それなりに有意義でした」


 本当はそれなりどころではない。


 十七厄災討伐など誰も想像しないだろう。


 だから言わない。


「そうか」


 レオンも深くは聞かなかった。


 そこはいつも通りだった。


 しばらく雑談した後、レオンが立ち上がる。


「なあ、久しぶりに一本どうだ?」


 その言葉にガイウスが笑う。


「出たよ。絶対言うと思った」


「私もそう思っていました」


 フィアナまで同意した。


 レオンは気にしない。


「どうだ?」


 ルシアンを見る。


「構いません」


 即答だった。


 こうして二人は訓練場へ向かう。


 幸い人はほとんどいない。


 新年度開始直前で、皆それぞれ準備で忙しいのだろう。


 木剣を手に取り、向かい合う。


「始めるぞ」


「どうぞ」


 次の瞬間、レオンが踏み込んだ。


 速い。


 以前より明らかに速い。


 そして無駄が減った。剣筋も洗練されている。力任せではない。


 リゼリアとの訓練や冒険者としての実戦。その成果が見て取れた。


 ルシアンは軽く受け流す。


 カン。


 木剣がぶつかる。


 レオンはすぐに次へ繋げた。


 斬る、払う、突く。


 以前より判断が速い。


 動きも滑らかだ。


 だが。


「悪くありません」


 ルシアンが言う。


 そして、半歩踏み込んだ。


「っ!?」


 レオンの視界から一瞬消える。


 気付いた時には木剣が喉元で止まっていた。


 勝負あり。


 レオンは苦笑する。


「全然見えなかった」


「前よりは良くなっています」


 ルシアンは木剣を下ろした。


「ですが」


 レオンが続きを待つ。


「まだまだですね」


 容赦がない。


 ガイウスが吹き出した。


「言われた」


「予想通りだな」


 テオドールも頷く。


 レオンは頭を掻いた。


「まあそうだろうな」


 悔しくないわけではない。


 だが納得もしていた。


 実際に以前より強くなった。


 それは自分でも分かる。


 しかし、目の前のルシアンとの差はまだ大きい。


「どこが足りない?」


 レオンが聞く。


 ルシアンは少し考える。


「技術です」


「やっぱりか」


「以前より良くなっています。ただし、まだ迷いがあります」


 レオンは真剣な表情で聞いていた。


「技術は身に付き始めています。ですが無意識に力で解決しようとする癖が残っています」


「なるほどな」


 リゼリアにも似たようなことを言われた。


 だから理解できる。


「焦らなくていいと思います」


 ルシアンは続けた。


「今のあなたは成長しています。だからこそ丁寧に積み上げるべきです」


 レオンはしばらく黙った。


 そして。


「ありがとな」


 素直にそう言った。


 ルシアンは少しだけ目を細める。


「どういたしまして」


 新年度まであと少し、勇者パーティもまた、それぞれ成長していた。


 そして明後日、アーカディアには新たな一年生たちがやって来る。


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