表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第5章 学園1年目 激動編
275/279

第274話

第274話


 戦いは終わらなかった。一時間、二時間、半日。それでも決着はつかない。


 地裂獣ベヒモスはまさに災厄の名に相応しい存在だった。


 どれだけ傷付けても倒れない。


 肉を裂く、骨を砕く、内臓すら露出する。


 それでも終わらない。


 大地が脈動するたびに魔力が流れ込み、傷が塞がり、肉が再生する。


 まるで大地そのものが生命維持装置になっているかのようだった。


「本当にしぶといわね……」


 エイルが呟く。


 既に戦闘開始から数時間。


 普通のSSランク魔物なら何度倒せたかわからない。


 だがベヒモスはまだ立っている。


 ルシアンは黙って攻撃を続けていた。


 風、影、そして闘いの神から受け継いだ力。


 ありとあらゆる手段で傷を与える。


 だがベヒモスもまた止まらない。


 咆哮、突進、前脚による踏み潰し。


 尾による薙ぎ払い。


 一撃ごとに空気が裂け、大地が砕ける。


 普通なら近付くことすらできない。


 しかし、ルシアンは避け、いなし、時には受け流す。


 致命傷だけは決して貰わない。


 戦いは続いた。


 昼が終わり、夜になり、朝が来る。そしてまた昼。


 時間の感覚がおかしくなるほど戦い続けた。


 二日目、ベヒモスはまだ倒れない。


 だがルシアンは気付いていた。


 回復が僅かに遅くなっている。


 最初は数秒だった。


 今は十数秒。


 傷が塞がる速度が落ちている。


「見えてきましたね」


 ルシアンが呟く。


 ベヒモスは無限に回復しているわけではない。


 大地から吸収できる魔力にも限界がある。


 そして、吸収量より消費量が上回り始めている。


 それが見え始めた。


 エイルも同じ結論に辿り着いていた。


「あと少し……?」


「いえ」


 ルシアンは首を振る。


「まだ長いです」


 実際その通りだった。


 そこからさらに長かった。


 二日目の夜、三日目の朝、三日目の昼。


 互いに止まらない。


 いや、止まれない。


 ルシアンもまた常識外れだった。


 元々の魔力量が膨大。


 それだけではなく、魔力効率が異常。


 使う魔力量を極限まで削りながら最大の威力を引き出す。


 さらに、戦いながら大気中の魔力を吸収している。


 普通なら不可能。


 だがルシアンにとっては呼吸と変わらない。


 使い、回復する。その繰り返し。


 だからこそ三日間戦い続けられた。


 そして、三日目の夕方。


 ついにその瞬間が訪れる。


 巨大な風刃がベヒモスの胴体を深く切り裂いた。


 大地が脈動する。


 魔力が流れ込む。


 だが、傷は塞がらない。


 ほんの少ししか回復しない。


 ベヒモスの巨体が揺れた。


「……来たわ」


 エイルが息を呑む。


 ルシアンも静かに頷く。


 限界だった。


 大地から吸収する魔力以上にダメージが蓄積している。


 回復が追い付かない。


 初めて、災厄が疲弊した。


 ルシアンは最後の一撃のために魔力を集める。


 風が唸り、影が集まる。


 膨大な魔力が凝縮される。


 ベヒモスも最後の力を振り絞るように咆哮した。


 空が震え、大地が割れる。


 だがもう遅い。


「終わりです」


 振り下ろされた一撃。


 圧縮された魔力の奔流がベヒモスを貫いた。


 轟音。


 巨大な身体が止まる。


 そしてゆっくりと、本当にゆっくりと、地裂獣ベヒモスは崩れ落ちた。


 山が倒れるような音が響く。


 土煙が舞い上がる。


 十七厄災、地裂獣ベヒモス討伐。


 三日三晩に及ぶ死闘の末。


 ついに災厄はその命を終えた。


 静寂が訪れる。


 エイルがその場に腰を下ろした。


「……勝ったのね」


「ええ」


 ルシアンも小さく息を吐く。


 流石に疲れた。


 だがまだ終わりではない。


 ルシアンの視線は既に倒れたベヒモスへ向いていた。


 そこには、彼にとって本当の目的が残されていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ