第266話
第266話
アーカディアへ帰還してから三日。
大規模試験の結果発表の日がやってきた。
勇者パーティは指定された部屋へ集められていた。
中にはレオニードの姿がある。
他にも試験官を務めていた教員たちが控えていた。
「全員揃ったな」
レオニードが書類を手に取る。
「それでは結果を発表する」
自然と空気が引き締まった。
ここまでの努力が評価される瞬間だ。
「結論から言おう。お前たちのパーティは合格だ」
その言葉にレオンたちは安堵の息を吐いた。
当然と言えば当然だ。
だが実際に言われると安心する。
「よし!」
ガイウスが拳を握る。
フィアナも微笑みを浮かべていた。
テオドールもどこか満足そうだ。
「これにより全員の進級が確定した」
レオニードは続ける。
「ただし」
その言葉でガイウスとノエルが嫌な予感を覚える。
「ガイウス」
「はい」
「筆記試験の点数が酷い」
「うっ」
「ノエル」
「……はい」
「お前もだ」
ノエルが露骨に目を逸らした。
「実技だけで生きていけるほど甘くはない。引き続き勉強もしっかりやれ」
「はい……」
「わかった……」
二人が揃って肩を落とす。
レオンたちは少し笑いそうになったが我慢した。
「以上だ」
レオニードは書類を閉じる。
「よく頑張った」
その一言は短かった。
だが重みがあった。
合同遠征、大規模試験、様々な経験を乗り越えた一年だった。
その後、一同はSクラスの教室へ集められた。
そこでは一年の最終順位が発表される。
黒板に順位が張り出されていく。
一位 グランヴェル
二位 レオン
三位 レティシア
四位 フィアナ
五位 テオドール
六位 シャロン
七位 リオルド
八位 ヴァルク
九位 ガイウス
十位 ディアナ
十一位 ノエル
十三位 ルシアン
順位を見て様々な反応が上がる。
「二位かぁ」
レオンが頭を掻く。
悔しくないと言えば嘘になる。
だが納得もしていた。
武闘大会も含め、グランヴェルの活躍は見ている。
「来年は負けないわ」
レティシアが静かに言う。
テオドールは鼻を鳴らした。
「上位陣は相変わらずだな」
そんなやり取りを聞きながらルシアンは静かに座っていた。
十三位、予定通りだ。
むしろ少し上振れたかもしれない。
そして順位発表が終わるとレオニードが再び前へ出た。
「明日から二週間の休暇に入る」
教室が少しざわつく。
「各自、新年度へ向けて準備を進めろ。修行するもよし、帰省するもよし、好きに過ごせ。ただし羽目を外し過ぎるなよ」
最後の一言に笑いが起きた。
「以上だ、解散」
こうして一年生最後のホームルームが終わる。
教室を出る者、友人と話す者、予定を立てる者。
様々だった。
「休みかー」
ガイウスが伸びをする。
「とりあえず修行だな」
「お前は少し勉強しろ」
テオドールが呆れたように言う。
「嫌だ」
「やれ」
そんなやり取りを見ながらレオンが笑う。
「みんな何するんだ?」
各々が予定を話し始める。
その時だった。
「ルシアン」
最近はあまり聞いていなかった声がした。
振り返る。
そこに立っていたのはヴァルクだった。
Sクラス八位、グランヴェルの護衛。
「少し時間を貰えるだろうか」
ルシアンはわずかに首を傾げた。
「構いませんが」
ヴァルクは短く頷く。
「グランヴェル様がお呼びだ」
その言葉にルシアンは少しだけ興味を抱いた。
合同遠征以来。
グランヴェルの様子がおかしいことには気付いていた。
そして今になって呼び出し。
何かあるのだろう。
「わかりました」
ルシアンは立ち上がる。
ヴァルクに続いて教室を後にした。
その先で待っているのは、一年最強の男、グランヴェル・レグナスだった。




