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果てなき世界  作者: 影川明空人
第5章 学園1年目 激動編
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第265話

第265話


 翌朝、勇者パーティを含むアーカディアの一行はダンジョン都市を出発した。


 実習は無事終了、成果も十分。


 あとは学園へ帰るだけだ。


 帰路は行きと比べて空気が明るかった。


 実習を終えた安心感もある。


 何より合同遠征の時のような緊張感はない。


 とはいえ警戒は怠らない。


 魔物の活動は活発化している。


 何が起こるかわからないからだ。


 それでも帰路は概ね順調だった。


 そして移動初日の夜、野営地で夕食を終えた頃だった。


 レオンが立ち上がる。


「リゼリア先輩」


 呼ばれた本人が顔を上げる。


「何かしら?」


「手合わせをお願いできませんか?」


 その言葉に周囲の視線が集まった。


 リゼリアは少し驚いたようだった。


「私と?」


「はい、技を学びたいんです」


 真っ直ぐな答えだった。


 リゼリアはしばらくレオンを見つめる。


 そして小さく笑った。


「いいわよ。ただし稽古で、本気ではありませんよ」


「もちろんです!」


 こうして簡易的な訓練場が作られた。


 周囲では四年生や試験官、勇者パーティの面々が見守っている。


 開始と同時にレオンが踏み込む。


 鋭い斬撃。


 だがリゼリアは最小限の動きで避けた。


 そのまま剣を絡める。


「っ!?」


 気付いた時には体勢が崩れていた。


 慌てて立て直そうとする。


 だが遅い。


 木剣の先が首元で止まった。


「一本よ」


 レオンが苦笑する。


「全然わからなかった」


「力任せだからね」


 リゼリアは当然のように言った。


「あなたは強いわ。でも強引に突破しようとする癖がある。私はそこを利用するだけ」


 再開。


 再びレオンが攻める。


 だが結果は同じだった。


 崩され、流される。


 気付けば体勢を失っている。


 力負けしたわけではない。


 技で負けている。


 それがよくわかった。


 その日の稽古は一時間ほどで終わった。


 終了後、レオンは地面に座り込んでいた。


「どうだった?」


 ガイウスが聞く。


「勉強になった」


 レオンは笑う。


「俺、まだまだだな」


 その様子を見ていたルシアンは少しだけ頷いた。


 悪くない。


 強くなるためにはまず知ることだ。


 自分に何が足りないのかを。


 その後も帰路は続いた。


 そして、夜営のたびにレオンはリゼリアへ挑んだ。


 二日目、三日目、四日目。


 何度も負け、何度も崩される。


 だが少しずつ変わっていった。


 踏み込み、重心移動、剣の軌道。


 視線と駆け引き。


 今まで感覚でやっていたことを意識するようになる。


 リゼリアもそれに気付いていた。


「飲み込みが早いわね」


 四日目の夜。


 手合わせを終えた後に言う。


 レオンは汗を拭った。


「そうですか?」


「ええ、まだ粗いけれど、最初の日よりはずっと良いわ」


 それは素直な評価だった。


 実際、最初は一方的だった。


 だが今では簡単には崩せなくなっている。


 もちろん実力差はまだ大きい。


 それでも確かな成長だった。


「ありがとうございます」


「お礼なら結果で返してください」


 リゼリアは少し笑う。


「あなたは勇者なのでしょう?」


 レオンも笑った。


「頑張ります」


 そうして数日後。


 一行は無事にアーカディアへ到着した。


 長かった大規模試験もこれで終了。


 あとは結果発表を待つだけだった。


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