第264話
第264話
ダンジョン都市へ戻った翌日。
勇者パーティは実習の後片付けや報告書の作成に追われていた。
その一方で、未探索領域については別途報告が必要だった。
そのため、レオン、ルシアン、そして試験官のグレイの三人は冒険者ギルドへ向かっていた。
今回訪れたのは中級者以上向けのギルドである。
相変わらず多くの冒険者たちで賑わっていた。
レオンたちは受付へ向かう。
「すみません」
レオンが声を掛ける。
受付嬢が顔を上げた。
「あら、アーカディアの皆さん。実習は終わったんですか?」
「はい」
レオンは頷く。
「それで報告したいことがあるんです」
受付嬢は不思議そうな顔をした。
「報告ですか?」
「深淵樹海で未探索領域を発見しました」
受付嬢の動きが止まった。
「……はい?」
今度はグレイが口を開く。
「事実だ。記録に存在しない空間を発見した。ギルドマスターへの取次ぎを頼みたい」
受付嬢の表情が一変した。
「し、少々お待ちください!」
慌ただしく奥へ消えていく。
しばらくして戻ってきた。
「応接室へご案内します」
三人は応接室へ通される。
数分後、扉が開いた。
入ってきたのは先ほどの受付嬢と、一人の壮年の男だった。
灰色の短髪、右頬には古い傷跡。鍛えられた体躯は年齢を感じさせない。
ただし現役時代の鋭さは少し落ちているのだろう。
それでも、只者ではないとすぐにわかる。
「待たせたな」
男が椅子へ腰掛ける。
「俺がこの街のギルドマスターだ。未探索領域を発見したそうだな」
元SSランク冒険者。
現在は引退しているが、ダンジョン都市に何かあった時に即応できるよう、この街のギルドマスターを務めている人物だ。
グレイが頷く。
「まずは地図だ」
そこから報告が始まった。
発見した場所、通路の状況、隠し通路の存在、内部の構造。
そして、三体の猿型魔物について。
ギルドマスターは途中で何度か質問を挟みながら話を聞いていく。
「なるほどな」
報告が終わる頃には、机の上には簡易地図とメモが並んでいた。
「三体ともSランク下位相当か」
「はい」
グレイが答える。
「ただし連携が異常だった。単純な戦力以上の脅威だ」
ギルドマスターは腕を組む。
「記録には存在しないな。少なくとも俺は聞いたことがない」
しばらく考え込む。そして小さく息を吐いた。
「貴重な情報だ。こちらでも調査隊を編成する、助かった」
グレイが頷く。
これで報告は完了だった。
立ち上がる三人。
ギルドマスターも席を立つ。
「アーカディアの学生か」
そう言ってレオンを見る。
「なかなか大したもんだ」
レオンは少し照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます。まあ、俺たちだけの成果じゃありませんけど」
「そういうところも含めてだ」
ギルドマスターは笑う。
そして最後にルシアンへ視線を向けた。
一瞬だけ、何かを考えるような目だった。
だがすぐに視線を外す。
「気を付けて帰れ、また何かあったら報告してくれ」
三人はギルドを後にした。
外へ出ると、夕方が近付いていた。
明日にはダンジョン都市を出発する。
アーカディアへ帰るためだ。
「早速だが」
グレイが言う。
「明日には出発する。荷物の整理を済ませておけ」
「わかりました」
レオンが頷く。
実習は終わり、残るのは帰るだけ。
そして、試験結果の発表が待っていた。




