第263話
第263話
未探索領域での発見は大きな成果だった。
三体のSランク魔物の討伐、未知の空間の発見。そして魔力を蓄積する指輪。
本来の試験目標を大きく上回る成果と言っていい。
そのため、勇者パーティは予定を変更し、地上への帰還を優先することになった。
帰路は慎重に進められた。
二十三階層から二十階層、二十階層から十五階層。来た道を戻るだけとはいえ、ダンジョンはそんなに甘くない。
魔物は出現するし、道を間違える可能性もある。
だが、ここまでの探索で得た経験は大きかった。
ノエルを中心に進路を確認しながら進み、遭遇した魔物は確実に排除していく。
Aランクの魔物とも何度か遭遇したが、今の勇者パーティが慌てることはなかった。
連携は以前より洗練されている。
誰が何をするべきか理解している。
だからこそ無駄がない。
十五階層、十階層、そして五階層。
順調に進み続けた。
途中で何度か野営も行ったが、大きな問題は起きなかった。
深淵樹海に潜ってから七日目。
ついに出口が見える。
「見えた!」
ガイウスが声を上げた。
差し込む太陽の光、久しぶりの自然な陽光だった。
ダンジョンの中でも明るかったが、やはり本物の太陽は違う。
レオンたちはそのまま地上へ出る。
暖かな風が吹いた。
全員が思わず息を吐く。
「終わったな」
レオンが空を見上げながら言った。
「無事にな」
テオドールも頷く。
試験官のグレイも小さく笑った。
「お疲れ様だ。予定を大きく超える成果だったな」
リゼリアたち四年生も安堵した表情を浮かべている。
正直なところ、ここまで順調に進むとは思っていなかった。
未探索領域の発見などなおさらだ。
「とりあえず宿へ戻るぞ」
セイルが声を掛ける。
「報告書も書かなきゃならん」
「うわぁ……」
ガイウスが露骨に嫌そうな顔をした。
周囲から笑いが漏れる。
どれだけ強くても、報告書からは逃げられないらしい。
ダンジョン都市へ戻る道中。
ルシアンは一人考えていた。
あの未探索領域に三体の魔物、そして指輪。
偶然と言うには出来すぎている。
だが、今は情報が足りない。
考えても答えは出ないだろう。
「ルシアン」
レオンが声を掛けてきた。
「どうかしましたか?」
「いや」
レオンは少し笑う。
「楽しかったなと思って」
ルシアンは少しだけ目を丸くした。
「……そうですね」
合同遠征、大規模試験、様々なことがあった。
だが、この一週間の探索は決して悪いものではなかった。
勇者パーティは確実に成長した。
それを実感できる実習だった。
やがてダンジョン都市が見えてくる。
長かった実習もこれで終わり。
残るのは結果発表だけだ。
だが、その前に勇者パーティには報告しなければならないことがあった。
未探索領域の発見。
それはこの都市にとっても大きな出来事になるはずだった。




