第259話
第259話
ダンジョン実習五日目。
勇者パーティは二十一階層から探索を再開した。
ここから先は本来予定していなかった領域だ。
だが、全員の状態は良好。
試験官や四年生たちも問題ないと判断し、探索続行が認められていた。
深淵樹海はさらにその表情を変えていく。
木々はより巨大になり、漂う魔力も濃くなっていた。
そして何より、出現する魔物が強い。
「来るぞ!」
レオンの声と同時に巨大な影が飛び出してくる。
Aランク下位の魔物、アサルトベア。
普通の冒険者パーティなら主力級の相手だ。
だが。
「右です」
ルシアンの指示を受け、レオンが動き、ガイウスが受ける。
テオドールの魔法が飛び、ノエルが死角を取る。
フィアナが支援する。
数分後には討伐完了。
危なげはない。
しかし。
「やっぱり今までとは違うな」
ガイウスが息を吐く。
「集中を切らしたら危ない」
テオドールも同意した。
Bランク帯までとは明らかに違う。
油断は許されない。
その後も探索は続く。魔物を倒し、素材を回収し、地図を更新していく。
巨大な魔石、高品質の薬草、深淵樹海特有の木材。
採点対象となる素材もかなり集まっていた。
昼を過ぎた頃には二十二階層を突破する。
まだ余裕はある。
慎重に進みながら二十三階層へ到達した。
その時だった。
「……ん?」
レオンが足を止める。
ほぼ同時だった。
フィアナも立ち止まる。
そしてルシアンも。
「どうした?」
ガイウスが首を傾げる。
レオンは周囲を見回した。
「なんか……気になる」
「私もです」
フィアナも頷く。
「向こうから何か感じます」
テオドールとノエルは顔を見合わせた。
「何も感じないが」
「私も」
二人にはわからないらしい。
ルシアンだけは沈黙していた。
(反応していますね)
わずかだが感じる。
何かがある。
理由はわからない。
だが、確かにある。
「行ってみましょう」
ルシアンが言う。
一行は反応のあった方向へ進む。
だが、そこにあったのは。
「行き止まり?」
ガイウスが首を傾げた。
ただの岩壁、何もない。
少なくともそう見えた。
「おかしいな」
レオンが壁へ近付く。
フィアナも不思議そうに見つめている。
「何もありませんね」
そう言いながら。
レオンは何気なく壁へ触れた。
その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴ―――
地面が揺れる。
「!?」
全員が武器を構えた。
壁に亀裂が走る。
そして、崩れた。
大量の岩が落ちる。
その奥に今まで存在しなかったはずの通路が現れる。
全員が息を呑んだ。
「は?」
ガイウスが素っ頓狂な声を上げる。
テオドールも珍しく驚きを隠せない。
「隠し通路……?」
グレイが前へ出る。
しばらく通路を観察し。
そして呟いた。
「記録にないな」
その言葉の意味は大きい。
深淵樹海は未踏破ダンジョンだ。
だが二十三階層までは何度も探索されている。
それなのに誰も発見していない。
「こんなところに未探索領域があったのか……」
リゼリアも驚いていた。
ダンジョン攻略を経験してきたからこそ、この発見の価値がわかる。
未知、それは危険でもあり、同時に大きな成果でもある。
レオンが振り返る。
「どうする?」
誰に聞くでもなく。
全員へ向けた言葉だった。
グレイは少し考えた後、言った。
「まずは状態確認だ」
無理はしない。
未知の領域ならなおさらだ。
体力、魔力、装備、怪我の有無。
全員が確認する。
問題なし。余裕も十分残っている。
レオンが頷いた。
「行こう」
誰も反対しない。
未知の領域、未探索の通路。
その先に何が待っているのか。
誰にもわからない。
勇者パーティは慎重に歩き始めた。
深淵樹海の奥へ、さらに深く。




