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果てなき世界  作者: 影川明空人
第5章 学園1年目 激動編
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第256話

第256話


 重厚な石扉の先。


 十階層のボス部屋は思っていた以上に広かった。


 天井は高く、周囲には巨大な木々の根が絡みついている。


 まるで森そのものが地下へ潜ったような空間だった。


 そして、その中央で巨大な魔物が待ち構えていた。


 全長五メートルはあるだろう巨大な熊型の魔物。


 全身を硬い樹皮のような外殻で覆われたフォレストグリズリー。


 Bランクの魔物だ。


「十階層のボスとしては妥当なところだな」


 テオドールが冷静に分析する。


 魔物が咆哮する。


 空気が震えた。


 だが、誰も怯まない。


 合同遠征でドラクスやゼルキスと対峙した彼らからすれば、この程度の威圧感は比較にならなかった。


「行くぞ!」


 レオンが前へ出る。


 だが以前のように勢い任せではない。


 距離を測り、相手の動きを見る。


 振り下ろされた巨大な腕を最小限の動きで回避し、そのまま剣を振るった。


 一閃。


 フォレストグリズリーの脇腹に傷が走る。


 以前ならそのまま追撃していたかもしれない。


 だが今は違う。深追いをせず、距離を取って次の動きを見る。


 昨日ルシアンから言われた言葉を思い出していた。


 正確に、無駄なく、丁寧に。


「いいぞ、レオン!」


 ガイウスが前へ出る。


 大盾を構え、魔物の注意を引く。


 受け止めるだけではない。


 体重を乗せて盾をぶつける。


 巨体がわずかによろめいた。


「今だ」


 テオドールの魔法が飛ぶ。


 雷撃。


 だが威力任せではない。


 正確に関節部分を狙っている。


 魔物の動きが鈍る。


 そこへノエルが飛び込み、死角から首筋を狙う。


 一撃を加え、すぐに離脱。


 無理に追わない。


 フィアナは後方から全体を見ていた。


 必要最低限の支援魔法だけを維持する。


 魔力は有限だ。探索はまだ続く。


 ここで消耗する理由はない。


 ルシアンもまた全体を観察していた。


 誰かが危険になれば介入する。


 だが、その必要はなかった。


 十分後。


 フォレストグリズリーは地面へ倒れ伏した。


 討伐完了。


 静寂が戻る。


「終わったな」


 ガイウスが肩を回す。


「思ったよりあっけなかったな」


「苦戦する要素がなかったからな」


 テオドールが答える。


 レオンも剣を収めた。


「まあ、今の俺たちならこんなもんか」


 慢心ではない。事実だった。


 合同遠征前ならもっと苦戦していたはずだ。


 だが今は違う。


 それぞれが確実に成長している。


 その後、一行は十一階層へ進む。


 今日はここまで、無理をする必要はない。


 開けた場所を見つけると、野営の準備を始めた。


 テントを張り、火を起こし、簡単な食事を作る。


 これも試験の一部、誰も手を抜かない。


 夕食を終えると、レオンを中心に振り返りが始まった。


「今日の反省点とかあるか?」


 最初に口を開いたのはテオドールだった。


「全体的には問題ない。ただ、十階層ボス相手では少し余裕がありすぎたな」


 ノエルも頷く。


「気は抜いてなかったけどね。もう少し先からが本番かな」


 フィアナも同意する。


「明日以降は魔物の強さも上がりますからね」


 ガイウスが笑う。


「ようやく戦い甲斐が出てくるってことだな」


「油断は禁物です」


 ルシアンが釘を刺す。


「深淵樹海は未踏破ダンジョンです。何が起こるかわかりません」


「わかってるよ」


 レオンが苦笑した。


 その後、明日の方針を確認し、見張りの順番を決める。


 最初はレオンとフィアナ、二番目はガイウスとノエル、最後はルシアンとテオドール。


 二人一組。


 何かあればすぐ全員を起こす。


 そう決めると、それぞれテントへ入っていった。


 深淵樹海の夜は静かだった。


 だが、その静けさはどこか不自然だった。


 まるで森そのものが眠っているような。


 そんな奇妙な静寂の中、勇者パーティのダンジョン二日目は幕を閉じるのだった。


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