第255話
第255話
ダンジョン実習二日目。
勇者パーティは早朝から深淵樹海へと向かった。
今日の目標は十階層。
そこに存在するボス部屋まで到達することだ。
昨日探索した五階層までは既に道筋を把握している。
特にノエルが地形の特徴をかなり理解していたため、移動速度は初日とは比べ物にならなかった。
「昨日よりだいぶ楽だな」
ガイウスが周囲を見回しながら言う。
「ノエルのおかげだ」
レオンの言葉にノエルは少しだけ肩を竦めた。
「別に、森を見るのは得意だから」
素っ気ない返事だったが、どこか満更でもなさそうだった。
探索は順調に進む。
途中、何度か魔物とも遭遇した。
六階層で現れたのはフォレストボアの群れ。
Cランクの魔物だ。
巨大な牙を持つ猪型の魔物であり、突進力はかなり高い。
しかし。
「来るぞ!」
レオンが前へ出る。
以前なら正面から力任せに受けていたかもしれない。
だが今回は違った。
突進を見極め、最小限の動きで回避する。
すれ違いざまに剣を振るう。
一閃。
フォレストボアの首筋から血が舞った。
そのまま勢いを殺せず転倒する魔物。
「よし!」
レオンは追撃しようとして、一瞬だけ動きを止めた。
無駄な力を使わない。
昨日ルシアンに言われたことを思い出す。
焦るな。正確に、丁寧に。
倒れた魔物へ最短距離で近付き、確実に急所へ剣を突き立てた。
討伐完了。
「前より良くなってますね」
ルシアンが言う。
「そうか?」
「ええ」
「少なくとも昨日よりは」
レオンは少し嬉しそうに笑った。
残りの魔物もガイウスとノエル、テオドールによって素早く片付けられる。
戦闘時間は数十秒程度だった。
深淵樹海の魔物は決して弱くない。
だが今の彼らにとって脅威になる相手ではなかった。
その後も探索を続ける。
七階層で珍しい植物を発見した。
「これは……蒼月草か」
テオドールがしゃがみ込む。
青白い光を放つ花。
夜になると月光を吸収する特殊な植物だ。
「高いのか?」
ガイウスが聞く。
「かなり」
「回復薬や精神安定薬の素材になる。状態の良いものならそれなりの値段で売れるはずだ」
ノエルとフィアナが丁寧に採取し、収納バッグへ入れていく。
学園の採点対象にもなるため、こうした素材は重要だった。
八階層、九階層。順調に進んでいく。
途中で遭遇した魔物も危なげなく処理した。
探索にも徐々に慣れてきていた。
そして昼過ぎ。
一行は十階層へ到達する。
ここまで大きな問題はなし。
想定よりも少し早いペースだった。
目の前には巨大な石扉。
明らかに周囲とは異なる造り。
誰が見てもわかる。
ボス部屋だ。
レオンが扉を見上げる。
「ここか」
ガイウスが盾を叩く。
「ようやくボスだな」
テオドールは冷静だった。
「Bランクの魔物とはいえ油断はするな。ボス個体は通常個体より強い」
フィアナも頷く。
「準備はしておきましょう」
ノエルは既に周囲を警戒している。
ルシアンは静かに石扉を見つめた。
十階層のボス。
今の勇者パーティなら問題なく勝てるだろう。
だが慢心は禁物だ。
深淵樹海は未踏破ダンジョン。
何が起こるかわからない。
レオンはゆっくりと剣の柄を握った。
「行こう」
全員が頷く。
そして、勇者パーティは十階層のボス部屋へ足を踏み入れた。




