第250話
第250話
移動開始から二日後。
勇者パーティを乗せた馬車は、ついに目的地へ到着した。
ダンジョン都市アルディア。
巨大な城壁を超えて中に入ると、無数の商店、武器屋、防具屋、素材買取店、宿屋。
そして、至る所を歩く冒険者たち。
都市全体が活気に満ちていた。
「おぉ……!」
ガイウスが目を輝かせる。
「すげぇなここ!」
レオンも周囲を見回す。
「本当に冒険者の街って感じですね」
セイルが笑った。
「そりゃあな。ダンジョンが三つもあるから、世界中から冒険者が集まってくる」
グレイが補足する。
「今日は現地での情報収集に充てろ。宿は既に押さえてある。明日から一週間が実習期間だ」
荷物を宿へ置いた後、勇者パーティは冒険者ギルドへ向かうことにした。
深淵樹海についての情報が必要だ。
⸻
アルディアには冒険者ギルドが二つ存在していた。
一つは初心者向け、そしてもう一つ中級者以上向け。
ダンジョン都市ゆえに冒険者が多すぎるため、一箇所では処理しきれないのだ。
「深淵樹海なら、こっちだな」
テオドールが言う。
彼らが入ったのは中級以上向けギルド。
扉を開いた瞬間、視線が集まった。
荒事慣れした冒険者たち全員が、一年生たちを値踏みするように見ていた。
「……」
ガイウスが少し居心地悪そうにする。
ルシアンは静かに周囲を観察。
(強い者もちらほらいますね)
受付へ向かう。
受付嬢が微笑んだ。
「ようこそアルディア冒険者ギルドへ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
フィアナが答える。
「深淵樹海について情報収集をしたいのですが」
受付嬢は少し驚いた顔をした。
だがすぐに営業用の笑みに戻る。
「でしたら閲覧室の利用をおすすめします。過去の探索記録や地図などもございますので」
結果、テオドールとフィアナは閲覧室へ行き、資料から情報収集をすることなった。
残る四人は実際の冒険者へ聞き込みをすることになった。
⸻
その時だった。
「おいおい」
ガラの悪そうな冒険者が話しかけてくる。
筋骨隆々で酒臭い。
「聞こえちまったんだがよぉ。お前ら深淵樹海に行くつもりか?」
レオンが素直に答える。
「そうですけど」
冒険者は大笑いした。
「やめとけやめとけ!お前らみたいなガキが行っても死ぬだけだぜ!」
周囲の冒険者たちもニヤニヤしている。
ガイウスが眉を寄せた。
「そんなのわからないでしょ」
ノエルも冷たく言う。
「私たちのこと知らないくせに」
冒険者は少し目を丸くした後、笑う。
「たしかに、それもそうだ」
だが周囲の空気はどこか挑発的だった。
一触即発。
その時。
「ちょっと待った」
声が響く。
軽い。
だが不思議と空気が変わる声。
ガラの悪い冒険者が苛立つ。
「いまいいとこなのに邪魔す――」
そして、その人物を見た瞬間、言葉が止まった。
周囲の冒険者たちも息を呑む。
そこに立っていたのは、爽やかな金髪の青年。軽装で腰には剣。
どこか軽い雰囲気。
だが纏う空気が違う。強者。それも圧倒的な実力者。
青年は笑う。
「深淵樹海の情報知りたいんだろ?俺が少し教えてやるから。場所変えようぜ」
そのまま受付へ向かう。
「部屋借りるぜー」
受付嬢が慣れた様子で頷く。
「はい、アステル様」
⸻
移動しながら、青年は苦笑した。
「悪かったな。あいつも悪い奴じゃないんだけどな」
レオンが少し警戒しながら尋ねる。
「あの、あなたは……?」
青年は「あー」と頭を掻いた。
「そういえば名乗ってなかったな」
そして笑う。
「俺はアステル。冒険者パーティ《巡る星々》のリーダーだ。よろしくな」
その瞬間、周囲の空気が少し変わった。
巡る星々、深淵樹海五十層に到達したSSランク冒険者パーティ。
その名は、流石に一年生たちでも知っていた。




