第249話
第249話
馬車は街道を進む。
車輪の音が一定のリズムを刻み、窓の外には森と草原が流れていく。
勇者パーティの馬車の中には一年生六人と、同行者たち。
比較的落ち着いた空気だった。
そんな中、グレイが静かに口を開いた。
「確認だ。お前たちが挑むのは《深淵樹海》で相違ないか?」
レオンが真っ直ぐ頷く。
「はい!」
迷いはない。
セイルが苦笑した。
「いやぁ、元気だねぇ……」
「深淵樹海は未だに完全攻略されてないダンジョンだから、何が出てくるかわからない。本当に気をつけろよ」
ガイウスが首を傾げる。
「そういえば、ダンジョンって結局どんな仕組みなんですか?」
グレイが説明を始めた。
「ダンジョンには階層が存在する。基本的に十層ごとに“ボス部屋”がある」
レオンたちも静かに聞く。
「そして、最終層のボスを倒すと、“ダンジョンコア”が出現する」
テオドールが頷いた。
「ダンジョンそのものを維持している核、ですね」
「そうだ」
グレイは続ける。
「コアを破壊すればダンジョンは消滅する。だが、壊さずそのまま残せば利用し続けられる」
だから資源価値の高いダンジョンは、基本的にコアを破壊しない。
都市国家や国が管理しながら利用している。
⸻
セイルが指を立てる。
「ちなみに、現在判明してる階層は――」
「《蒼晶洞窟》が十層、《黒鉄迷宮》が三十層、そして《深淵樹海》は……不明」
少し空気が変わる。
「現在攻略されてるのは五十層まで。ただし、それより下が存在しないとは誰も言ってない」
ガイウスが少し顔を引きつらせた。
「え、怖……」
ノエルは窓の外を見ながら呟く。
「五十層まで行った人いるんだ」
リゼリアが静かに頷く。
「ええ。ちなみに五十層のボスはSSランクらしいわ」
一瞬、馬車内が静かになる。
SSランク。
学生が気軽にどうこうできる領域ではない。
セイルが苦笑した。
「まあ、お前らがそこまで行く必要はないから安心しろ。普通に死ぬ」
「安心できないんですけど!?」
ガイウスが突っ込む。
リゼリアが少し懐かしそうに言った。
「私も一年の時、この試験で深淵樹海に挑んだわ」
レオンたちが視線を向ける。
「どこまで行けたんですか?」
「十八層」
十分凄い。
だが、リゼリアは首を横に振る。
「深淵樹海は特殊なの。一層ごとの広さが異常で、森そのものが一階層になっているようなものだから」
ミレイも補足する。
「探索だけで時間を取られます。しかも地形変化もあるので、単純な強さだけでは進めません」
視界、索敵、足場、気配、全てが重要になる。
ルシアンは静かに話を聞いていた。
(未踏破……)
(深層……)
興味深い。
ダンジョン、それ自体が世界の謎に近い存在。
未だ完全解明されていない。
なぜ存在するのか、誰が作ったのか、どこまで続いているのか。
何もわかっていない。
レオンは拳を握る。
「でも、だからこそ挑みがいがありますね」
セイルが笑った。
「前向きだなぁ勇者様は」
グレイも少しだけ目を細める。
「……悪くない心構えだ」
馬車は進む。目的地、ダンジョン都市アルディアへ向かって。




