第241話
第241話
合同遠征から数日。
アーカディア学園は、未だ重い空気に包まれていた。
例年行われているSクラス合同遠征。
だが今年は違った。教員の死亡、上級生の死亡。そして、大量の負傷者。
あまりにも被害が大きすぎた。
廊下を歩く生徒たちもどこか静かだ。
特にSクラスの空気は重い。
実際に戦場を見た者たちほど、その現実を引きずっている。
中には心が折れてしまった者もいた。
合同遠征に参加したSクラス生徒のうち、何人かは自主退学。
一年生だけでも五人。
四天王の圧倒的な力、絶望的な戦力差。
あれを見てなお立ち向かえる者ばかりではない。
むしろ普通なら心が折れる。
アーカディアに入学できるほどの才能を持っていても。
現実はあまりにも過酷だった。
⸻
一年Sクラス教室。
空席が増えている。
それが妙に現実感を与えていた。
ガイウスがぽつりと呟く。
「……減ったな」
誰も否定しない。
ノエルも珍しく何も言わなかった。
テオドールが静かに窓の外を見る。
「仕方ないとはいえ、重いな」
ルシアンは目を閉じている。
その隣、レオンの席は空いていた。
まだ療養中、オーバードライブの反動。
しかも今回は、武闘大会の時以上だった。
ドラクス相手に限界を超えた力を無理やり引き出した。
その代償は大きい。
未だまともに動けない状態が続いていた。
その時、教室の扉が開く。
入ってきたのはレオニード。
空気が少し引き締まる。
レオニードは教室を見渡した。
減った人数、沈んだ空気。
当然気づいている。
だが何も言わない。
ただ静かに口を開いた。
「……近々、一年の総まとめとなる大規模試験を行う」
空気が少し変わる。
「内容は二つ。筆記試験、そしてダンジョン実習だ」
何人かが顔を上げる。
レオニードは続けた。
「ダンジョン実習はパーティ単位で行う。数日かけて攻略を進めてもらう形になる。今回の結果によってはランキング変動、及びクラス替えもあり得る」
ざわつく教室。
レオニードは淡々と説明する。
「実習地はダンジョン都市アルディア、アーカディアから少し離れた位置に存在する都市だ」
「この都市には三つのダンジョンが存在している」
ダンジョン。それだけで空気が少し変わる。
冒険者にとって特別な場所。
未知、財宝、危険。
様々なものが眠る場所。
「どのダンジョンへ挑むかは自由。当然、難易度によって評価基準も変わる。また、今回は卒業間近の四年生三名と試験官二名が各班へ同行する」
四年、つまりアレス世代。
教室が少しざわつく。
レオニードは最後に言った。
「今回の試験は、お前たちがこの一年で何を得たかを見る試験だ」
その言葉が静かに響く。
合同遠征、敗北、絶望。
その全てを経て、自分たちは何を得たのか。
試される時が近づいていた。




