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果てなき世界  作者: 影川明空人
第5章 学園1年目 激動編
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第239話

第239話


 数日後。


 馬車列は、ようやくアーカディアへ近づいていた。


 長かった撤退行。追撃こそなかったものの、全員の疲労は大きい。


 だが、少しずつ回復してきていた。


 ガイウスも動けるようになり。


 ノエルやテオドールも傷は塞がりつつある。


 グランヴェルも既に目を覚ましていた。


 悔しそうな顔のまま、ほとんど口を開かないが。


 それでも前は向いている。


 ただ一人を除いて。


 レオンだけは未だ眠ったままだった。


 今回の戦闘でのオーバードライブ、限界を超えた一撃。反動と疲労が大きすぎた。


 フィアナが何度も様子を確認しているが、まだ起きる気配はない。



 その日、ルミナス騎士団と別れるタイミングが来た。


 アーカディアまであと少し。


 騎士団はここから別方向へ向かう。


 そのため、生徒、教員、騎士団。


 全員が一度集められた。


 重い空気。


 誰もが今回の戦いを引きずっている。


 そんな中、前へ出たのはシグルドだった。


 その表情も険しい。


「……今回は例年以上に魔族が兵を集めていた」


 静かな声。


 だが、その場の全員へしっかり届く。


「学生からも死者を出してしまった」


 空気が沈む。


 四年二名、三年二名。


 その現実は重い。


 シグルドは続ける。


「だが、これが現実だ」


 誰も反論できない。


 戦場。そこでは死ぬ。


 どれだけ才能があっても、どれだけ強くても。届かなければ死ぬ。


「既に聞いている者もいるだろうが、いま世界各地で魔物の動きが活発になっている。それに伴い、魔族の動きも活発化している」


 ざわめき。


 だが、誰も軽くは受け止めていない。


 今回、それを実際に目にしたからだ。


 シグルドは静かに言う。


「原因は未だ不明だ。だが、こうした動きは年々増えていくものと思われる」


 空気が重い。


「いままで以上に戦力が必要とされている」


 そして、シグルドは生徒たちを見る。


「……もしかしたら、今回の戦いで心折られた者もいるかもしれない」


 図星だった。


 視線を落とす生徒もいる。


 特に下級生。あの戦場、あの絶望。


 四天王、SS級魔族。


 心を折られてもおかしくない。


 だが、シグルドは真っ直ぐ言った。


「それでも、どうか折れないでほしい」


 その声には力があった。


「前を見て進んでほしい。いずれ、君たちの力が必要になる時が、必ず来る」


 静寂。


 その言葉を、生徒たちは黙って聞いていた。



 アレスは静かに拳を握る。


 悔しい。届かなかった。守れなかった。


 それでも、止まる気はない。


 カインも同じだった。


 獣のような目で前を見ている。


「次は負けねぇ……」


 アルトも静かに目を閉じる。


 今回の敗北。その意味を噛み締めるように。


 他にも、闘志を燃やしている者は多い。


 だが一方で、立ち直れない者もいた。


 恐怖が抜けない。


 自分では到底届かない。


 そう思ってしまった者たち。


 戦場の現実は、あまりにも重かった。


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