第236話
第236話
暴風が吹き荒れる。
銀髪の守護者エイル。そして、蒼髪の四天王イリシア。
二人が戦場へ現れた瞬間、空気が一変した。
アレスたちは荒い息を吐きながら距離を取る。
カインも大剣を支えに立っている状態。
アルトも満身創痍。
ゼルキスだけが、いつも通り楽しそうに笑っていた。
「あ、来た来た」
まるで待ち合わせでもしていたような軽い口調。
イリシアの眉が僅かに動く。
「……なぜあなたがここにいるんですか」
冷たい声だった。
ゼルキスは肩を竦める。
「えー?面白そうだったから?」
イリシアの目が細まる。
明確な苛立ち。
「今回の作戦にあなたは含まれていません。勝手な行動は控えてください」
だが、ゼルキスは笑うだけ。
「別にいいじゃん。勇者、気になったし」
イリシアがレオンを見る。
倒れたまま満足に動けない。
そして、周囲にいる一年生たち。
未来ある人材、人類側の希望。
だからこそ、イリシアは冷たく言い放つ。
「あなたが相手をしているのは、どれも将来有望な者たちです。さっさと殺してください」
その瞬間、空気が凍る。
レオンたちの表情が強張る。
だが、ゼルキスは困ったように笑った。
「えぇー?」
「俺は勝手に来ただけだからさぁ」
「君の命令に従う理由ないよねぇ?」
イリシアのこめかみに青筋が浮かぶ。
「……ゼルキス、あなたは本当に」
怒っている。
珍しく、感情を露わにしていた。
その一瞬、エイルの視線がアレスたちへ向く。
そして、僅かに顎を動かした。
――集まれ。
アレスが即座に理解する。
「全員寄れ!!」
カインとアルトが動く。
フィアナがレオンを支える。
ガイウス、ノエル、テオドールも集まる。
その瞬間、エイルが小さな石を投げた。
緊急離脱用の転移石。
次の瞬間、眩い光が戦場を包む。
「っ!?」
ゼルキスが目を細める。
だが、一瞬遅い。
光がアレスたちを包み込む。
転移。ゼルキスが残念そうに呟いた。
「えぇー」
「もう少し遊びたかったのに」
そして、ひらひらと手を振る。
「じゃ、俺飽きたから帰るね」
その軽さに、イリシアの怒気が一気に増した。
「……あなたは本当に好き勝手を」
ゼルキスは笑う。
「だって楽しかったし?」
そう言い残して、四天王ゼルキスの姿が消える。
残されたのは、怒りを隠さないイリシアと崩壊した戦場だけだった。




