第235話
第235話
カイン・ブラッドレイ、アルト・セイリオス、そしてアレス・グランツヴァルト。
武闘大会上位三人。
アーカディア最強格の学生たちが、この場に揃った。
普通なら、それだけで戦場をひっくり返せる戦力。
だが。
「いいねぇ」
カインの斬撃を受けたゼルキスは、無傷で楽しそうに笑っていた。
「やっと面白くなってきた」
まるで、強敵と対峙した顔ではない。
暇潰しの玩具を見つけたような顔だった。
「どけぇぇぇ!!」
最初に動いたのはカイン。
獣のような踏み込みで、地面を砕きながら突撃する。
武闘大会で見せた時以上の速度と膂力。
大剣がゼルキスへ叩き込まれる。
轟音。
だが。
「うん」
ゼルキスが片手で受け止めた。
「重いねぇ」
「でもそれだけ」
次の瞬間、カインの身体が吹き飛ぶ。
「がっ……!?」
地面を何度も跳ねながら転がる。
ありえない。
カイン・ブラッドレイ、あの怪物じみた膂力を片手で止めた。
その隙にアルトが動く。
二刀流。氷剣生成。
武闘大会でアレスすら後退させた技。
超高速連撃。
正確無比で完璧な身体制御。
だが。
「綺麗だねぇ」
ゼルキスが笑う。全部見えている。全部避けられる。
そして、軽く指で弾かれた瞬間。
氷剣が粉砕された。
「っ!?」
「技術は好きだよ。でも弱いなぁ」
蹴りを受け、アルトが吹き飛ぶ。
アレスが間髪入れず斬り込む。
一閃。鋭く、速い。
確実に今の学生最強。
だが、ゼルキスは笑う。
「君は一番マシかな」
紙一重で避ける。
そして、肘打ち。
「っ……!!」
アレスが吹き飛ばされ、血が舞う。
誰も届かない。
三人がかり。
それでも、ゼルキスは遊んでいる。
本気ではない。殺そうともしていない。
なのに、圧倒的。
「ぐっ……!」
カインが再び立ち上がる。
血塗れ。
それでも笑う。
「はっ……!」
「最高じゃねぇか……!!」
再突撃。
だが、結果は変わらない。
殴られる。吹き飛ばされる。
アルトも、アレスも。
少しずつ削られていく。
じわじわと確実に、絶望へ近づいていく。
⸻
後方、ルシアンは静かに戦況を見ていた。
(……まずいですね)
本気を出せば止められる。
少なくとも、この場を切り抜けることはできる。
だが、人が多すぎる。
アレス、カイン、アルト、フィアナ、レオン、ルミナス騎士団。
ここで本気を出せば。
間違いなく異常だと悟られる。
(まだ駄目です)
ここで正体を晒すわけにはいかない。
だから、最低限しか動けない。
その間にも、アレスたちはどんどん傷ついていく。
「うーん」
ゼルキスが首を傾げる。
「思ったより頑張るね君たち」
その時だった。
戦場に新たな魔力が飛び込んでくる。
暴風。そして、蒼い魔力。
ゼルキスが「あ」と声を漏らした。
「来ちゃった」
二つの影が戦場へ降り立つ。
一人は銀髪の守護者、エイル。
そしてもう一人。蒼髪の女、四天王イリシア。
戦闘中だったはずの二人が、ついにこの場へ現れた。




