第227話
第227話
翌朝。
最前線拠点は、早朝から慌ただしく動いていた。
武器の確認、魔道具の調整、結界装置の起動。
出撃準備が着々と進んでいく。
Sクラスの生徒たちも、各々装備を整えていた。
ガイウスが大盾を背負いながら息を吐く。
「……なんか本当に戦争って感じだな」
「実際そうだろう」
テオドールが冷静に返す。
その視線はすでに前線へ向いていた。
ノエルは黙ったまま短剣を確認している。
フィアナも静かに祈りを捧げていた。
レオンは剣を握り直す。
武闘大会とは違う。
ここでは、本当に命が失われる。
そんな緊張感が確かにあった。
⸻
しばらくして、全体説明が始まる。
前へ出たのは第四隊隊長ヴァレイン。
後ろにはシグルドとエイル、ヨルドの姿もある。
ヴァレインが地図を広げた。
「今回の活動範囲はこの一帯だ。基本的に各パーティ単位で動くが、学年ごとに配置を分ける」
指が地図をなぞる。
「四年と三年はある程度自由行動だ。実力的にも問題ないからな」
最上級生たちは静かに頷く。
すでに何度も遠征を経験している者も多い。
「二年と一年は学年単位でまとまって動いてもらう。パーティごとの連携を維持しつつ、周囲をルミナス騎士団で囲む形になる」
つまり、守られながらの実戦。
まだ学生である以上、それは当然だった。
ヴァレインが一年側を見る。
「一年は最後方だ。最も撤退しやすい位置に置く」
その言葉にガイウスが少し不満そうな顔をする。
「……信用されてないみたいだな」
シグルドが淡々と言った。
「実際、まだ未熟だからな」
「ぐっ……」
言い返せない。
レオンは静かに息を吐いた。
悔しい、だが事実だ。
武闘大会で思い知らされた。
自分たちは、まだ弱い。
エイルが柔らかく口を開く。
「でも、無理をしない判断も強さですよ。生きて帰ることを最優先にしてください」
その言葉は優しい。
だが、だからこそ重かった。
⸻
説明終了後、各部隊が移動を開始する。
ルミナス騎士団、守護者、Sクラス。
多数の戦力が一斉に動き出す光景は壮観だった。
レオンたち一年組は最後方。
周囲には第四隊の騎士たちが展開している。
ガイウスが周囲を見ながら呟く。
「なんかすげぇ守られてるな俺たち」
「当然だろう」
テオドールが返す。
「お前は死にたいのか」
「いや別に!」
ノエルがぼそり。
「死にそうになったら真っ先に死にそう」
「お前ほんとひでぇな!?」
少しだけ緊張が和らぐ。
だが、周囲の空気は確実に重かった。
進むにつれて、景色が変わっていく。
草木は減り、地面は荒れ、魔力の濃度が増していく。
空気そのものが不快だった。
フィアナが小さく顔をしかめる。
「……嫌な感じがします」
レオンも頷いた。
「うん」
以前の遠征学習とは比べ物にならない。
ここは本物の前線だ。
ルシアンは静かに周囲を観察していた。
(……妙ですね)
気配が多い。
だが、静かすぎる。
まるで、待ち構えているような。
その時だった。
前方、先頭付近で突如轟音が響く。
爆発と悲鳴、地面が揺れる。
「敵襲!!」
怒号が響いた。
同時に、空気が一変する。
ルミナス騎士団が即座に動く。
「前衛展開!」
「結界維持!」
「生徒を守れ!!」
怒号が飛び交う。
ガイウスが反射的に盾を構えた。
「っ!?」
森の奥から無数の影。
現れたのは大量の魔族。
下級、中級、さらに、Aランク級以上の気配も混ざっている。
レオンが剣を抜く。
「来るぞ!」
ついに最前線の戦いが始まった。




