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果てなき世界  作者: 影川明空人
第5章 学園1年目 激動編
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第225話

第225話


 長期休暇明けから数日後。


 ついに合同遠征当日を迎えた。


 朝早くだというのに、アーカディア学園は普段以上の緊張感に包まれている。


 校庭には大量の馬車。


 整列する生徒たち。


 そして、全学年のSクラスが一堂に会していた。


 一年、二年、三年、四年。


 普段はそれぞれ別行動である彼らが、同じ場所へ集まるだけでも異様な光景だった。


 その中でも、一際目立つ存在が二人。


 一人は銀髪の女性。


 細身の体躯、柔らかな雰囲気を纏っているが、その周囲の空気はどこか鋭い。


 守護者――エイル。


 そしてもう一人。


 圧倒的な巨体、まるで岩山のような男。


 そこに立っているだけで威圧感がある。


 守護者――ヨルド。


 ガイウスが思わず呟いた。


「で、でけぇ……」


 ヨルドはガイウスをちらりと見る。


 それだけでガイウスの背筋が伸びた。


「お、おはようございます!」


 周囲から小さな笑いが漏れる。


 対してエイルは少し苦笑した。


「そんなに緊張しなくていいですよ。危なくなったら私たちが助けますから」


 軽い口調。


 だが、その言葉には絶対的な安心感があった。


 守護者、人類最強クラス、世界を守る存在。


 そんな者が二人も同行する。


 それだけ今回の遠征が重要ということだった。


 やがて前へ出たのはレオニード。


 周囲が静まり返る。


「これより、全学年Sクラス合同遠征を開始する。目的地は魔族領付近、説明は以前した通りだ」


 静かな声。


 だが、空気は重い。


「なお、今年は例年以上に魔族側の動きが活発化している」


 その言葉に、生徒たちの表情が引き締まる。


「ルミナス騎士団も現地で合流予定だ。お前たちは基本的にパーティ単位で行動してもらう。勝手な単独行動は禁止だ」


 ノエルが小さくため息を吐く。


 ガイウスがすかさず見る。


「ほらな! 絶対勝手にどっか行くなよ!」


「行かない」


「信用できねぇ!」


「うるさい」


 いつものやり取り。


 だが、その空気のおかげで少しだけ緊張が和らいだ。


 レオニードは続ける。


「過去には死人が出たこともある」


 一瞬、場の空気が止まる。


「だが、それでもこの遠征は必要だ。お前たちはいずれ世界の中心に立つ者たちだからだ。学園の中だけで終わるな」

「世界を知れ」


 その言葉には重みがあった。


 勇者、聖女、王族、騎士。


 未来の英雄候補。


 ここにいるSクラスの生徒たちは、いずれ世界を動かす側になる。


 だからこそ、本物を知らなければならない。


 レオンが静かに拳を握る。


(魔族領……)


 武闘大会、アレスとの戦い。


 あれですら、まだ“学園の中”だった。


 だが、これから向かうのは本当の戦場。


 命を落としてもおかしくない場所だ。


 ルシアンはそんなレオンを横目で見る。


(覚悟はできているようですね)


 少なくとも以前よりは、確実に成長している。


 その時だった、エイルがふと遠くを見る。


 その表情が、わずかに曇った。


「……今年は嫌な感じがしますね」


 小さな呟き。


 だが、守護者の言葉だけに重い。


 ヨルドも腕を組んだまま低く唸る。


「魔族側も動いている」


 短い言葉、それだけで十分だった。


 生徒たちの緊張感がさらに増す。


 レオニードが手を上げる。


「では移動を開始する。各パーティごとに馬車へ乗れ」


 その言葉と共に、生徒たちが動き始めた。



 ルシアンたちのパーティも馬車へ乗り込む。


 レオン、フィアナ、ガイウス、テオドール、ノエル、そしてルシアン。


 いつもの面々。


 だが、今日は空気が違う。


 馬車がゆっくり動き出す。


 学園都市を離れ、最前線へ向けて。


 ガイウスが窓の外を見ながら言った。


「なんか、本当に戦場行くんだなって感じしてきた……」


 テオドールが静かに頷く。


「実際、戦場だからな」


 レオンも窓の外を見る。


 まだ見えない魔族領。


 その先に何が待っているのか。


 誰にも分からない。


 ただ一人、ルシアンだけが静かに目を細めていた。


(……始まりますか)


 世界の均衡が崩れ始めた今。


 この遠征はきっと、ただの実習では終わらない。


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