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果てなき世界  作者: 影川明空人
第5章 学園1年目 激動編
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第224話

第224話


 長期休暇が終わった。


 久々に賑わうSクラスの教室。


 休暇前と同じ顔ぶれ。


 だが、どこか空気は違っていた。


 それぞれが、この休暇中に何かを得てきた。


「うおー! やっぱ学園落ち着くな!」


 教室へ入るなり、ガイウスが大きく伸びをする。


 ノエルが冷めた目を向けた。


「全然変わってない」


「なんだよそれ!」


 いつものやり取り。


 だが、それを見てレオンが小さく笑う。


「まあ、なんか安心するな」


 長期休暇中。


 レオンはバルセリオン王国へ戻り、勇者として様々な挨拶回りをしていた。


 王族、騎士団、貴族、期待と重圧、疲れた。本当に疲れた。


「勇者って大変なんだな……」


「今更ですか?」


 ルシアンが苦笑する。


「いや、なんかこう……」


「思ったより“偉い人”が多くてさ」


「でしょうね」


 フィアナも静かに頷いた。


「私も似たようなものでした」


 聖女である彼女も、休暇中は聖国リュミエルで様々な役目をこなしていた。


 儀式や祈り、神殿関係者との会合。


 休暇というより仕事である。


 テオドールが椅子へ座りながら言う。


「とはいえ、有意義ではあった」


「実家の蔵書を漁れたからな」


「相変わらずだなぁ……」


 レオンが苦笑する。


 ガイウスも腕を組んだ。


「俺は毎日鍛えてたぜ!」

「かなり強くなった気がする!」


 ノエルがぼそり。


「気のせい」


「お前さぁ!?」


 教室に小さな笑いが起こる。


 長期休暇明けのどこか穏やかな空気。


 だが、その空気は教室へ入ってきた一人の男によって変わった。


 Sクラス担当教員のレオニード。


 教室内が自然と静まる。


「戻ってきて早々で悪いが」


 レオニードが静かに口を開く。


「数日後に全学年Sクラス合同遠征がある」


 一瞬、教室の空気が止まる。


「……合同遠征?」


 レオンが呟く。


 レオニードは頷いた。


「行き先は魔族領付近だ」


 ざわつく教室。


 魔族領、その単語の重みは大きい。


 人類と魔族は、長い歴史の中で争い続けてきた存在。


 最近では比較的均衡が保たれていた。


 だが、それでも危険地帯であることに変わりはない。


 レオニードは続ける。


「この遠征は毎年行っている遠征であり、守護者も二名同行する」

「さらに、ルミナス騎士団からも何人か加勢に来る」


 ルミナス騎士団。


 世界最強クラスの騎士団。


 その名前に反応する者も多い。


「目的としては、お前たち自身の目で世界の現状を知ってもらうこと」

「そして、魔族との実戦を経験することが目的だ」


 レオンたちの表情が自然と引き締まる。


 実戦。訓練ではない、本物。


 レオニードの目が教室を見渡す。


「Sクラスの生徒はいずれ世界を支える側になる」

「王族、勇者、聖女、騎士団、貴族、冒険者」

「立場は違えど、お前たちは将来的に世界の中心へ立つ者たちだ」


 静かな声、だが重い。


「だからこそ、学園の中だけで終わらせるわけにはいかん」


 一拍。


「もちろん危険はある。実際、過去には死人が出たこともある」


 教室内がざわつく。


 ガイウスも思わず表情を変えた。


「死……」


「だが」


 レオニードが続ける。


「なるべくそうならないよう、守護者とルミナス騎士団が同行し、安全は可能な限り確保する。それでもなお、お前たちには“本物”を知ってもらう必要がある」


 静寂。


 誰も軽口を叩かなかった。


 武闘大会とは違う。


 これは、世界の現実だ。


 ルシアンは静かに目を細める。


(……ついに来ましたか)


 魔族領付近、最前線。


 世界の均衡が崩れ始めている今。


 この遠征が、ただの実習で終わるとは到底思えなかった。


 レオニードはさらに続ける。


「なお、合同遠征は基本的にパーティ単位で行動してもらう。勝手な単独行動は禁止だ」


 その言葉に、ガイウスがちらりとノエルを見る。


「……ちゃんと一緒に動けよ?」


「は?」


「いやお前すぐどっか行くだろ!」


「行かない」


「絶対行く!」


 少しだけ空気が緩む。


 レオニードも小さく息を吐いた。


「詳細は後日説明する」


「今日は以上だ」


 そう言って教室を後にする。


 残された生徒たちは、しばらく無言だった。


 やがて、レオンが小さく拳を握る。


「魔族領、か……」


 勇者として、ついに本当の最前線へ足を踏み入れる。


 その実感が、静かに胸へ広がっていた。


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