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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4.5章 学園1年目 束の間の
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第223話 sideカイル

第223話 sideカイル


 東方小規模国家群。


 大小様々な国が乱立するその地域は、古くから争いの絶えない土地だった。


 大国ほどの軍事力はない、強力な守護者もいない。


 だからこそ、入り込む余地がある。



 ある小国の城、玉座の間。


 そこには、かつての国王はいなかった。


 代わりに、黒いローブを纏った者たちが静かに立っている。


 そして、その中心。


「順調ですねー。恐ろしいほどに」


 楽しそうに笑う男。


 セドリオン。


 柔らかな物腰、軽い口調。


 だが、その目の奥には底知れない狂気があった。


 カイルはその隣に立ちながら、静かに周囲を見渡す。


「そうですね」


 今日もまた一つ、小国が邪神教の支配下へ置かれた。


 表向きは平和的。


 だが実際には違う。


 脅迫、懐柔、洗脳、裏切り。


 様々な手段を使い、少しずつ侵食していった結果だった。


 セドリオンが玉座へ腰掛ける。


「いやぁ、本当に順調です。あまりにも順調に行きすぎて、後でしっぺ返しが来そうで怖いですねー」


 カイルは無表情のまま返す。


「本当に思ってますか」


「それはもちろん」


 セドリオンは即答した。


「私は怖がりなんですよ?」

「慎重派とも言います」


 絶対嘘だな、とカイルは思った。


 だが口には出さない。


 セドリオンは楽しそうに続ける。


「ただ、本当の目的である欠片については見つかってないので、順調と言っていいのかは微妙ですが……」


 邪神の欠片。


 それこそが邪神教最大の目的。


 国家支配も、勢力拡大も、全てはそのための過程に過ぎない。


 セドリオンが顎へ手を当てる。


「でも、なんとなく、そろそろ手がかりが見つかりそうな気がします。私の勘は割と当たるんですよ」


「そうですか……」


 カイルは淡々と返した。


 内心では別のことを考えている。


(……すでにいくつか候補は絞れている)


 邪神教内部へ潜入してからかなり経つ。


 その間に、カイルは欠片に関する情報も少しずつ集めていた。


 そして、残りの欠片の位置も、ある程度予想がついている。


 問題は、どこまで急ぐべきか。


 最近、世界の空気が変わってきていた。


 魔物活性化、十七厄災、各地で増える異変。


(時間がないかもしれない)


 セドリオンがふと笑う。


「カイル君も最近は少し暇なのでは?」

「抵抗してくる人もいますが、最近はほとんど私の元まで刃を届かせられるものがいないので」


 事実だった。


 カイルが護衛として付き始めてから、セドリオンへ届く攻撃は激減した。


 単純にカイルが強すぎる。


 それだけだった。


「私が命じられているのはセドリオン様の護衛なので、安全に越したことはないです」


 カイルは淡々と答える。


 セドリオンは楽しそうに目を細めた。


「真面目ですねカイル君は」

「私は好きですよ、そういうところ」


 カイルは無言。


 この男は掴みどころがない。


 思想も、本心も、まるで霧だ。


 だからこそ厄介だった。


 その時、勢いよく扉が開く。


 邪神教徒の一人が、慌てた様子で入ってくる。


「セ、セドリオン様!」


 セドリオンが穏やかに笑う。


「どうしましたか」


 教徒が近づき、耳打ちする。


 その瞬間、セドリオンの笑みが深くなった。


 ゆっくりとカイルの方を見る。


「カイル君。私の勘は割と当たると言ったでしょう」


 カイルは静かに目を細める。


「……見つかったのですか」


「ええ」


 セドリオンは立ち上がった。


「いきますよ」


 その声には、隠しきれない高揚が混ざっていた。


 カイルもまた静かに歩き出す。


(これが確保されれば、あと六つか)


 残りの欠片、その場所も、すでにある程度予想はついている。


(少し急がなければ)


 世界は、確実に動き始めていた。


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