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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4.5章 学園1年目 束の間の
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第220話

第220話


 数日後。ルシアンとクラリスは、アルケシア王国の王都へ到着していた。


 アーカディア学園のある巨大都市とはまた違う賑わい。


 整備された石畳、美しく並ぶ建物、行き交う貴族の馬車。


 アルケシア王国王都――王国の中心。


 久々に見る景色だった。


「やっぱり落ち着くわね」


 クラリスが小さく息を吐く。


「そうですね」


 ルシアンも静かに頷いた。


 故郷というほど長くいたわけではない。


 だが、それでも帰ってきたという感覚はある。


 特にルシアンにとって、この王都は色々な意味を持つ場所だった。



 しばらくして、二人は王都中心部に位置する、巨大な屋敷へ到着していた。


 リュクレール公爵家。


 アルケシア王国でも屈指の名門。


 広大な敷地に重厚な門。そして洗練された庭園。


 王族の屋敷と並んでも見劣りしない威容だった。


 門をくぐると、使用人たちがすぐに頭を下げる。


「お帰りなさいませ、クラリス様」


「ただいま」


 クラリスは自然に返す。


 ルシアンも何度か訪れているため、特に止められることもない。


 そのまま応接室へ案内された。


 そして、しばらくして部屋へ入ってきた男を見て、ルシアンは立ち上がる。


「お久しぶりです。リュクレール公爵」


 アレクシス・リュクレール。


 アルケシア王国を支える大貴族の一人。


 鋭い目をしているが、威圧感だけではない。


 冷静さと知性を感じさせる男だった。


 クラリスも小さく頭を下げる。


「ただいま戻りました。お父様」


 アレクシスは二人を見ると、僅かに表情を和らげた。


「よく帰ってきたな二人とも」


「元気そうで何よりだ」


「ありがとうございます」


 クラリスが答える。


 アレクシスはソファへ座りながら言った。


「いろいろ話を聞かせてくれ」



 その後、武闘大会の話になった。


「ほう」


 アレクシスが興味深そうに目を細める。


「アレス・グランツヴァルトか」


「噂以上だったようだな」


「ええ」


 クラリスが頷く。


「正直、別格でした」


 ルシアンも静かに口を開く。


「少なくとも現時点では、学園最強でしょう」


「……現時点では、か」


 アレクシスが小さく笑う。


「相変わらず面白い言い方をするな、ルシアン君は」


 ルシアンは特に否定しなかった。


 クラリスが少し楽しそうに見ている。


 アレクシスはさらに話を続ける。


「勇者の少年も相当だったと聞いている」


「レオンですね」


「ああ」


 王都にも武闘大会の情報はかなり入っていた。


 特に勇者関連は注目度が高い。


「まだ未熟だが、将来性は十分か」


「そうですね」


 ルシアンは静かに頷いた。


「確実に強くなっています」


 その言葉には、はっきりとした実感があった。



 話は武闘大会だけでは終わらない。


 王国情勢、学園、魔物活性化、最近の各国の動き。


 アレクシスは政治家としても優秀だ。


 話の端々から、情報量と洞察力の深さが見える。


 そして、その中でも特に興味深そうにルシアンを見ていた。


「ヴェルグレイヴ領もかなり復興してきているようだな」


「兄様が頑張っていますから」


「アルベルト君は優秀だ」


 アレクシスは素直に評価する。


「若いのによくやっている」


「ありがとうございます」


 ルシアンの声音は穏やかだった。


 兄を褒められて悪い気はしない。



 気付けば、かなり長い時間話していた。


 外はすでに夕暮れ。


「今日はゆっくり休むといい」


 アレクシスが言う。


「ありがとうございます」


 その日は、リュクレール公爵家へ泊まることになった。



 そして翌朝。まだ朝靄が残る時間。


 ルシアンはすでに出発準備を終えていた。


 王都からヴェルグレイヴ領までは、それなりに距離がある。


 早めに出た方がいい。


 屋敷の前まで来ると、そこにはクラリスがいた。


「……もういっちゃうの?」


 少しだけ不満そうな声。


 ルシアンは苦笑する。


「兄にも会いたいので」


「そう言われたら引き止められないじゃない」


 クラリスが小さく息を吐く。


 ルシアンにとって、ヴェルグレイヴ領と兄アルベルトがどれほど大切か。


 彼女もよく知っていた。


「気をつけてね」


「また会いましょう」


「ええ」


 ルシアンが頷く。


「また休み明けに」


 クラリスが微笑む。


「ええ」


 その笑顔を見届けてから。


 ルシアンは歩き出した。


 王都を抜け、街道へ出る。


 その先にあるのはヴェルグレイヴ伯爵領。


 そして七年間、復興を続けてきた兄のいる場所だった。


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