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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4.5章 学園1年目 束の間の
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第217話

第217話


 アレス・グランツヴァルトとの秘密の戦いから数日後。


 ルシアンは何事もなかったかのように学園へ戻ってきた。


「お、帰ってきた!」


 ガイウスが大きく手を振る。


「結構長かったな!」


「少し面倒な任務でして」


 ルシアンはいつも通り微笑む。


 その様子に変わったところはない。


 レオンも軽く笑った。


「お疲れ」


「そっちはもう大丈夫なんですか?」


「まあな」


 まだ本調子ではない。


 だが、オーバードライブの反動もかなり抜けてきていた。


 以前のように普通に動けるようにもなっている。


「今度は置いていかれないように鍛えてた」


 レオンが苦笑する。


 その言葉に、テオドールが小さく肩を竦めた。


「お前だけじゃない」


 武闘大会。


 あの戦いを見て、何も思わない者などいなかった。


 カイン、ゼノス、アルト、そしてアレス。


 学園最上位層の戦いは、Sクラスの生徒たちに強烈な刺激を与えていた。


 授業は以前と変わらず行われる。


 魔法理論、実戦訓練、戦術講義。


 だが、どこか空気が違った。


 皆、以前よりも明確に強さを求め始めていた。



 そして、時間は過ぎていく。


 武闘大会終了後の一ヶ月は、驚くほどあっという間だった。


 レオンは以前にも増して鍛錬へ打ち込むようになった。


 精霊との連携、勇者の力の制御、そして剣術。


 毎日のように訓練場へ通い、汗を流していた。


 ガイウスも負けていない。


「うおおおおおっ!!」


 巨大な盾を構えたまま突進。訓練用の岩人形を吹き飛ばす。


「もっと硬く!もっと強く!」


 方向性はいつも通りだった。


 ノエルは相変わらず単独行動が多い。


 だが、以前より森へ行く頻度が増えていた。


 風属性と闇属性。その扱いがさらに鋭くなっている。


 テオドールは研究室に篭る時間が増えた。


 武闘大会上位陣の戦闘を思い返しながら、新しい魔法理論を組み立てているらしい。


「やはり魔力制御効率をさらに高める必要があるな……」


 ぶつぶつと呟きながら、紙へ術式を書き込んでいた。


 フィアナは聖女としての役目もあり、時折学園を空けることが増えた。


 それでも、空いた時間にはレオンたちの回復や訓練補助をしている。


 そしてルシアン。


 彼もまた、普段通りに見えた。


 授業へ出席し、時折レオンたちへ助言し、静かに学園生活を送る。


 だが、誰も知らないところで時折姿を消していた。



 そして、一ヶ月が過ぎた頃。


 学園内の空気が少しずつ変わり始める。


「もうそんな時期か」


 レオンが窓の外を見ながら呟いた。


 長期休暇。


 アーカディア学園では年に一度、約一ヶ月半の長期休暇が存在する。


 学園都市出身ではない者も多い。


 そのため、この時期は実家へ戻る生徒が多かった。


 特に貴族階級の生徒たちは、社交や報告も兼ねて帰還するのが一般的だ。


 学園内もどこか浮ついている。


「帰省楽しみだなー」


「お前まだ荷造りしてないのか?」


「やば、忘れてた」


 そんな会話がそこかしこで聞こえてくる。


 Sクラスの教室も例外ではなかった。


 ガイウスが椅子にもたれながら言う。


「いやぁ〜、長期休暇か!」


「どうすっかなぁ!」


 ノエルが呆れたように見る。


「何も考えてなかったの?」


「いや、鍛えるのは決まってる!」

「それ以外!」


「……脳筋」


「なんか言ったか!?」


 いつものやり取り。


 だが、その空気はどこか穏やかだった。


 武闘大会での激戦で張り詰めていた空気が、少しだけ緩んでいる。


 レオンも小さく笑う。


「まあ、休める時に休んどくのも大事だよな」


 そう言いながらも。


 彼の目には、まだ強い闘志が残っていた。


 アレス、届かなかった壁。


 だが、諦めるつもりはない。


(次はもっと強くなってやる)


 そんな思いを胸に。


 長期休暇前の、穏やかな日々が過ぎていくのだった。


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