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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第209話

第209話


 決勝戦終了後。


 闘技場には、未だ熱狂が残っていた。


 歓声と興奮、ざわめき。


 誰もが先ほどの戦いを語っている。


「やばかったな……」


「最後の一撃、見えたか?」


「いや無理だろ……」


「カインも化け物だったのに……」


「アレスが強すぎる……!」


 観客席の一角でレオンたちも、決勝の余韻の中にいた。


 ガイウスが頭を抱える。


「なんなんだよ、あの動き……」

「カイン先輩、めちゃくちゃだったぞ」


 テオドールが静かに頷く。


「あれほどの不規則機動を、途中から完全に見切っていた。やはり異常だな」


 ノエルも珍しく素直に呟く。


「……あれは勝てない」


 レオンは苦笑する。


「やっぱり別格すぎる」


 一拍。


「俺、よくあの人と戦ったな」


 ガイウスが笑う。


「いやマジでな!普通なら一瞬で終わっててもおかしくなかっただろ!」


 テオドールも小さく頷く。


「実際、お前はかなり食らいついていた。少なくとも、あの場にいた誰もが勇者の力を認識しただろう」


 レオンは少し黙る。


 脳裏に浮かぶアレスの背中。


 届かなかった頂点。


 だが――


 拳を握る。


「でも」


 小さく。


 だが、確かに。


「いつか必ず届いてみせる」


 その目は、もう折れていなかった。



 しばらくして、アナウンスが響く。


「――これより、表彰式を執り行います」


 闘技場が静まる。


 中央へ、三人が並ぶ。


 三位――アルト・セイリオス。


 二位――カイン・ブラッドレイ。


 そして。


 一位――アレス・グランツヴァルト。


 歓声。


 その前へと歩み出る三つの影。


 学園長、そして。


 守護者ヒューギル、守護者エイル。


 観客席がざわつく。


「……あれが守護者か」


「初めて見た……」


「すげぇ圧だな……」


 ヒューギルはいつものように静かだった。


 黒衣。


 そして、その周囲を飛ぶ二羽の黒いカラス。


 エイルもまた、鋭い眼差しで場を見渡している。


 学園長が静かに口を開く。


「今年も素晴らしい戦いだった。特に今年は、例年以上に粒揃いだったと言えるだろう」


 一人ずつ、表彰が行われる。


 アルト。


 カイン。


 そして――アレス。


 絶対王者。


 未だ無敗。


 表彰を終えたその時、学園長が再び口を開く。


「最後に」


 闘技場が静まる。


「優勝者、アレス・グランツヴァルトには、“ある程度の望みを叶える権利”が与えられる」


 観客席がざわつき、注目が集まる。


「そなたは何を望む」


 アレスが静かに前へ出る。


 迷いはない。


「より強き者と相対することを望みます」


 一瞬。


 空気が止まる。


「私は」


 真っ直ぐ前を見る。


「いま以上に強くならなければならない。さらなる高みを目指すために」


 ざわめき。


「……強敵との戦い?」


「そんなの望むのか……?」


「やっぱり戦闘狂だろあいつ……」


 だが、ヒューギルが静かに口を開く。


「静まれ」


 一言で、空気が静まる。


 ヒューギルがアレスを見る。


「アレス・グランツヴァルトよ。お前は、いま以上の強敵との戦いを望むか」


「はい」


 即答。


 ヒューギルは数秒、沈黙する。


 考えるように。


 そして。


「……いいだろう」


 静かに告げる。


「こちらで場を整えよう」


 アレスの目がわずかに開かれる。


「ありがとうございます!」


 その声には、珍しく感情が乗っていた。


 歓声、熱狂。


 そして――


 学園長が締めくくる。


「これにて、アーカディア学園武闘大会、全日程を終了とする」


 盛大な拍手と歓声。


 こうして、長き戦いは、幕を閉じた。



 夕方。


 闘技場から人々が去っていく。


 レオンたちも、帰路についていた。


「いやぁ、最後まで濃かったな」


 ガイウスが笑う。


 レオンも小さく頷く。


「決勝、すごかったな」


 ノエルがぼそりと呟く。


「アレス先輩、結局最後まで底見えなかったし」


 テオドールも腕を組む。


「まだ何か隠しているな、あれは」


 ルシアンは静かに歩いていた。


 その時、一羽のカラスが飛んでくる。


 そして、ルシアンの肩へ止まった。


「……」


 ルシアンの目が細くなる。


(嫌な予感がしますね)


 カラスは静かに鳴いた。


 ルシアンが足を止める。


「すみません」


 四人を見る。


「急用を思い出しましたので、先に帰っていてください」


 ガイウスが首を傾げる。


「お、おう?」


 レオンも小さく頷く。


「よくわかんないけど、気をつけてな」


「ええ」


 短く返し。


 ルシアンは一人、闘技場へ戻っていく。



 闘技場の一角。


 人払いされた静かな場所。


 そこに――ヒューギルがいた。


 黒衣。


 二羽のカラス。


 静かな威圧感。


 ルシアンが歩み寄る。


「それで」


 静かな声。


「何の用でしょうか」


 ヒューギルは、ゆっくりとルシアンを見た。


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