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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第207話

第207話


 武闘大会最終日。


 朝から学園都市は異様な熱気に包まれていた。


 ついに今日、頂点が決まる。


 三位決定戦。


 そして――決勝戦。


 闘技場は、すでに満員だった。


 観客席の一角でガイウスが大きく伸びをする。


「いやぁ、ついに最終日か。なんかあっという間だったな」


 テオドールが腕を組む。


「毎試合濃すぎたからな」


 ノエルは頬杖をつきながら闘技場を見ていた。


「……今日で終わりか」


 その時。


「すみません、少し通りますよ」


 聞き慣れた声に三人が振り返る。


 ルシアン。


 そして、その肩を借りるようにして歩くレオンの姿があった。


「おっ、レオン!」


 ガイウスが立ち上がる。


「大丈夫なのかよ!?」


 レオンが苦笑する。


「大丈夫……とは言い難いけどな」


 顔色は悪くない。


 だが、動きは明らかに重い。


 ルシアンが支えるように隣に座らせる。


「まだ無理はしないように言われていますから、本当は安静にしていて欲しかったのですが」


 レオンが肩をすくめる。


「無理するなとは言われたけど」


 一拍。


「流石に見たいからな」


 その言葉に、ガイウスが笑う。


「そりゃそうだ」


 ノエルがちらりとレオンを見る。


「まだ全然本調子じゃなさそうだけど」

「……まあ、死にそうではないね」


「お前なぁ……」


 レオンが苦笑する。


 テオドールが静かに口を開く。


「決勝も気になるが、まずは三位決定戦だ」


 視線が闘技場へ向く。


 アナウンスが響く。


「――武闘大会、第三位決定戦!」


 歓声。


「ゼノス・ラグナート!」


 爆発的火力の短期決戦型。


 準決勝ではカインに敗れたものの、その危険性は誰も疑っていない。


 ゼノスが静かに歩き出る。


 対して――


「アルト・セイリオス!」


 歓声。


 正確無比な完全制御型。


 王者アレスに敗北した男。


 だが、その強さは未だ健在。


 中央で二人が向かい合う。


 レオンが小さく息を吐く。


「……どっちが勝つと思う?」


 ガイウスが腕を組む。


「わかんねぇな。でもゼノス先輩、また速攻で決めに来るんじゃね?」


 ルシアンが頷く。


「おそらく。ゼノス先輩は長引くほど不利になります。なので、今回も最初から全力でしょう」


 レオニードが手を上げる。


「――始め」


 瞬間。


 ゼノスが消える。


 爆発的加速。


 初手から最大火力。


 空気が裂ける。


 だが――


 アルトは動じない。


 踏み込むと同時に左手に氷剣を形成。


 二刀流。


 観客席がざわめく。


「最初から二刀流!?」


「本気だ……!」


 ゼノスの剣が迫る。


 だが、アルトの身体が捻れる。


 異常な角度。


 普通なら崩れる。だが崩れない。


 己の身体を完全に制御している。


 そのまま回転。


 右の剣、左の氷剣による二方向同時攻撃。


 ゼノスが弾く。


 だが――


 次が来る。


 速く、トリッキーな動きで軌道が読めない。


 ガイウスが目を見開く。


「うおっ!?」

「なんだ今の動き!?」


 テオドールが低く呟く。


「準決勝の時より洗練されている」


 ノエルも目を細める。


「……アレス先輩相手じゃ意味なかったけど、他には普通に通じるんだ」


 その通りだった。


 アレスは崩れなかった。


 だが――


 ゼノスは違う。


 爆発力では上だが、対応しきれない。手数と変則性に追いつけない。


 アルトが踏み込む。


 低姿勢で回転。


 逆方向への加速。


 右、左、連撃。


 ゼノスが受け切れない。


 徐々に押される。


「っ……!」


 初めて、ゼノスの表情が歪む。


 さらにアルトが踏み込む。


「終わりだ!」


 二刀同時の交差斬撃。


 ゼノスが防ぐ。


 だが――


 完全には間に合わず、氷剣が滑り込み直撃。ゼノスの身体が吹き飛び、地面を転がる。


 立ち上がろうとする。


 だが――


 膝が崩れ、そのまま倒れる。


 レオニードが手を上げる。


「――そこまで!」


 一拍。


「勝者、アルト・セイリオス!」


 歓声。


 アルトが静かに息を吐く。


 氷剣が砕け、消える。


 レオンが小さく笑う。


「やっぱ強ぇな……」


 ルシアンも頷く。


「ええ」

「アレス先輩に通じなかっただけで、十分、異常な領域です」


 闘技場。


 アルトが倒れたゼノスを見る。


「……これでも、まだ届かなかったんだよな」


 小さく呟き、その場を後にする。


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