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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第205話

第205話


 準決勝第二試合。


 その決着の余韻は、しばらく闘技場から消えなかった。


 担架で運ばれていくアルト。


 そして、その背を静かに見送るアレス。


 歓声は鳴り止まない。


 だが、その歓声の奥にある感情は、単純な熱狂だけではなかった。


 畏怖。


 それが最も近い。


「……なんだよ、あれ」


 ガイウスが呆然と呟く。


「アルト先輩、めちゃくちゃ強かったじゃねぇか……」


 その通りだった。


 完全制御。


 常人離れした身体操作。


 二刀流。


 あの連撃は、間違いなく異常な領域だった。


 だが――


 それでも。


 届かなかった。


 テオドールが静かに息を吐く。


「別格だな」


 一言。


「アルトですら、歯牙にも掛けられていない」


 ノエルも珍しく真面目な顔で闘技場を見ていた。


「……引くくらい強い」


 小さく呟く。


「カイン先輩も十分化け物だったけど」


 一拍。


「今の試合見たら、アレス先輩が負けるイメージ湧かない」


 ガイウスが大きく頷く。


「それな!」


「どうやって勝つんだよ、あれ!」


 ルシアンは静かにアレスを見ていた。


(……やはり)


 今大会。


 アレスは一貫している。


 受け。


 防御。


 観察。


 それだけ。


 自分から崩しにいかない。


 にもかかわらず――


 誰一人、崩せない。


(しかも)


 まだ余裕がある。


 魔法も使っていない。


 切り札も見せていない。


 それなのに。


 ここまで圧倒的。


 ルシアンが小さく目を細める。


(……本当に完成されている)


 観客席。


 ざわめきは広がり続けていた。


「やっぱアレスだろ……」


「でもカインもやばかったぞ」


「決勝どうなるんだ……?」


「絶対見逃せねぇ」


 熱気。


 期待。


 それらを飲み込むように、アナウンスが響く。


「――明日の休養日を挟みまして」


 闘技場が静まる。


「武闘大会最終日を開催いたします」


 一拍。


「第三位決定戦」


「ゼノス・ラグナート 対 アルト・セイリオス」


 歓声。


 さらに。


「決勝戦」


 一瞬で空気が変わる。


「カイン・ブラッドレイ」


「対」


 間。


「アレス・グランツヴァルト」


 爆発的歓声。


「うおおおお!!」


「来たぁぁ!!」


「怪物対決じゃねぇか!!」


 熱狂。


 誰もが、その戦いを待っていた。


 そして。


「なお、決勝戦終了後に表彰式を行います」


 アナウンスが締めくくる。


 観客席。


「明後日が楽しみすぎるだろ……!」


「カイン、どこまでやれるんだ?」


「いやでもアレスだろ……」


「でも見たいよな、あの王者が崩れるところ」


 期待が渦巻く。


 武闘大会。


 ついに、終幕が近づいていた。



 闘技場を後にするアレス。


 その背中を、誰もが見ていた。


 王者。


 絶対王者。


 未だ底を見せない存在。


 そして――


 その背中へ、真正面から牙を剥こうとしている男がいる。


 カイン・ブラッドレイ。


 獣のような戦闘勘を持つ怪物。


 理屈を超えて勝つ男。


 完成された王者か。


 理不尽な獣か。


 決戦の日は、すぐそこまで迫っていた。


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